どうやら裏切られたことで冷静さをかいていたようだ。
だがやはり彼女を信じることは難しい。執念深い疑念が私の怒りを煽るからだろう。土壇場で彼女がどう動くかまもなく結果は出るはずだ。
叶うことなら私自身これ以上彼女を傷つけたくはなかった。
だから牢から出ないでくれ!私を置いて行くな!
守るといったのは確かに方便だったが、それはある意味真実でもあった。
罠を仕掛ける一方で堅牢な牢で彼女を守ってもいたのだ。
もしあの場から動かなければ彼女の安全は保障されていた。
身の振り方を決めるのは私ではなく彼女自身の決断にゆだねられていた。
私との約束を守り大人しく待っていたらその時は私自ら彼女を迎えに行こう。
そしてこの腕に込め二度と逃がさない。
そう思っていたのだがどうやら私は賭けに勝てたらしい。
いや心理戦を制したのは彼女だろうか?
牢の床に頽れて尚気丈に振舞う彼女の健気な姿に思わず不覚にも胸を打たれた。
潤んだ瞳と熱い吐息が私の欲望を煽る。
唇で慰撫してやりたい衝動にかられてキスをしてしまった。
救いを求めるようにしがみついてきた彼女を思わず抱きしめたら
その小さな身体の温もりにデジャブを覚えた。