心より先に肉欲の快楽だけを教え込まれてしまったロラン様だったけれど、その心は無垢なるほど愛を求めていた。
だからわかっていただけるだろうか?この気持ち・・
「ロラン様にお願いがあります」
遠のく意識の中申し出た私の願いにロラン様は耳を傾けてくださった。
「大切な貴女の願いならなんなりと」
他の方への思慕を聞くのは彼のような方には耐えがたいことかもしれなかった。
けれど条件を提示しなければフェアとはいえなかった。もしもライザール様に危機が及ぶ時は私が対処すればいい。
「私には愛している方がいます。なにがあろうともその方の元へ戻らねばなりません。だから1年だけ、貴方のお傍にいますから・・もしその方が私を探しに来たら解放してください・・・」
それは心からの願いだった。
ロラン様は私が誰を愛しているすでにご存じだった。だから私の手に自分の手を重ねて微笑んでくれた。
「お約束します。・・・だからそれまでは僕だけの貴女でいてくださいね、シリーン・・僕は貴方を愛しています」
それがロラン様と言葉を交わした最後だった。
血を抜かれても劣化することなく瑞々しい「人形」と化した私は、かつてクライデル領だった地方の領主となられたロラン様が所有する城の貴賓室に運び込まれた。
短い夏と秋と長い冬を経て春が巡って約束の1年が経つまで・・・
来る日も来る日もロラン様は人形になった私を愛でて愛を囁き、キスをして共に眠った。
ロラン様の人形遊びは1年の間露見することもなく続いたが、新たな犠牲者は出なくなったし、側近は密かに胸をなでおろしていただろう。
ロラン様が私に興味を持ったことで難を免れた娘もいた。
ライザール様が行方を気にされていたカミルという名の少女はマイルズの本を目印にして待ち合わせ場所に向かったが迎えが来ずに諦めて家に戻ってきたそうだ。
事情を知る側近は主の乱心が漏れないように気を配っていたし、もとより風変りな方だけに時折顔を合わせていたヴィンス殿下も気づかれなかった。