クライアントの一人であったテオドール様の始末は彼らの領分だったけれど、我々の領分の事案も水面下で動いていたことを知る者はない。

 

ヴィンス殿下が城を鎮圧した時、身元不明の男の遺体が発見されたが、捕虜の話によれば呪術師と呼ばれる者だったそうだ。

 

考えてみればテオドール様は最初から我々の存在を見越して準備されていた。

 

心を読まれないための護符や私の正体を暴いた銀の刃も呪術師が用意した物だった。

 

パメラ様の行方を知るために私を利用しようとしながら、一方で邪魔になるのを見越してヴィンス殿下に始末させるつもりつもりだったのだろう。

 

けれど所詮は三流の男だった。店主様の命を受け暗躍していたジェミルに始末された。

 

呪術師の男はクライデルの生き残りだったようだ。醜かったため女たちに相手にはされなかったが、呪術に詳しかったため重宝されていたらしい。

 

彼はパメラ様を密かに慕っていたらしいが、だからこそクライデルを滅ぼしたヴィンス殿下に報復したかったのだろう。結局彼の理由も嫉妬・・・

 

私が滞在していたクライデルの城にあった結界もどうやら彼の施したもののようね。

 

ルーガンの城にも施されていたけれどそれはライザール様に助け出された後、同様に処理した。

 

呪術師は三流だったけれど結界自体はそれなりに効力があったからジェミルは近寄れなかったのだけれど、対人の効果はないから戦乱のさなか慌てて逃げようとして結界の外に出たことが彼の運のつきだったというわけ。

 

ともかく混乱は収束に向かい、事後処理に追われるヴィンス殿下を余所にシャナーサ王宮では会議も無事閉幕して皆続々と帰国の途についていた。

 

次世代指導者会議で垣間見た孤高の王子、ヴィンス殿下の挫折からの健闘、そして勝利は皆の心に一様に未来に対する向上心をもたらしたようだ。

 

今回の事案はライザール様の支援があればこそ良い結果になったともいえる。だって彼は名君ですもの。カリスマ性があり人の心を動かす術を知っている方だった。そういう意味でも今回の会議がシャナーサで行われたのは意義があったようね。

 

 

懸念だったヴィンス殿下の問題が解決して残る問題を抱えたロラン様も帰国される以上、どれだけライザール様が名残惜しくても私は行かねばならない。

 

だからしばしの別れをつげるために私は彼の元を訪ねることにした。

 

今夜だけはロラン様には遠慮していただいた。ヴィンス殿下の保護の元ルーガンへの帰国が決まったロラン様とは二人きりで話し合う必要があったから、会う約束を交わすことで彼にも納得していただいたの。