一人になった私は服装を整えながら、ロラン様が潜む木陰に視線を転じた。
「出ていらして、ロラン様。私とお話を致しましょう?」
声をかけるとしばらくしてロラン様が姿を現した。
その顏は紅潮して、双眸は欲望に濡れていた。
「・・・てっきり僕、貴女はヴィンス殿下がお好きなんだと思っていました・・でも貴女が愛しているのはライザール王なんですね・・彼が羨ましいです」
!
嫉妬と羨望と狂気に満ちたロラン様をここまで追い詰めたのは本当にパメラ様の一件だけなのだろうか?もしかすると・・彼は・・
ふとある考えが浮かぶ。女性を喜ばせることが全ての彼がもしその技術を失ってしまったならばどうだろう・・?
精神的あるいは肉体的な要因で充分起こりうることだった。
「こちらへお座りになって・・少々疲れてしまいました」
意味を察したのか頬を染め大人しく並んで座った彼の肩に頭をもたせかけた私は会話を続ける。
肉体的な快楽を共有したいと望む彼に応えることはできなかったけれど、エンパスとしての私の能力を使えば可能なこともある。ロラン様がライザール様を拒絶していないのであればあるいは・・・
「ねえ、ロラン様は私がお気に召したのでしょう?ならばとっておきの方法があるのですが試されますか?」
誘惑するように彼の顔を覗き込むと、ロラン様は魅入られたように瞳を輝かせた。
「どういう・・・意味ですか・・・?僕に・・・なにを・・」
「ロラン様がお疑いのように、私は人ではありません。だからこそ貴方の欲望を違う形でなら叶えてさしあげることはできます。いかがですか?」
あくまでも決めるのはロラン様だった。
「でも・・貴方はライザール王を愛しているのでしょう?」
私の気持ちを察してくださるとは思わなかったが、彼の言うとおりだった。
これからする提案は人の道に外れているのかもしれなかったが、私は人ではないし、彼のような共感能力に欠けた相手には有効な手段だった。
「ええ・・・愛しております。ですから貴方の愛に肉体で応えることはできませんが、ロラン様のお気持ちも無下にはできませんもの。
だからほんの少しですが私の力を分けてさしあげます。そうすればもっと貴方は私を感じることができますわ・・どうなさいます?望まれますか?」
誘惑のささやきに頷いたロラン様の額に私は額を押し当てた。
息が絡むほどの距離の親密な行為だった。
それは一種の精神感応ともよべるものだった。
私の喜怒哀楽とロラン様の感情を繋げるのだ。彼のように私とライザール様と快楽を共有したいと思う者ならば十分可能だった。
「その代り約束してくださいませ、けっして余所見はしないと・・私だけを見て私だけを求めると・・・」
被害者を増やすことはできない以上、暗に仄めかすとロラン様はうっとりとした様子で頷いてくれた。まるで幼子のように無垢な笑顔だった。
「よかった・・お約束ですよ、ロラン様・・ではそろそろ参りましょうか」
笑顔のロラン様の華奢な腕に腕を絡めた私は連れ立って皆の元へと戻る。
ヴィンス殿下は渋い顔をされたし、ライザール様も嫉妬を滲ませた燃えるような眼差しで見たが、賓客の手前平静を装われていた。
ヴィンス殿下はともかくライザール様はわかってくださると思う。
もちろん私だって心身伴う快楽はライザール様と二人きりで愛し合いたいけれど、精神的な快楽の共有はまた別だった。
わずかな期間でロラン様と信頼関係を結び、彼の秘密を共有するためだった。