行為の後気の向くまま彼と話した。少し打ち解けた彼は幼名がルトだったと教えてくれた。
境遇はまるで違うけれど共通点も少しだけあって嬉しかった。
デーツが好きで、弟を大切に思っているのね。私と同じ・・・
話す間も彼は私に優しいキスをくれる。彼の心は真紅の薔薇のようだった。
その鮮烈な赤に私は魅入られてしまう。
彼には少しでも私のことを知って欲しかったからエンパスであることを打ち明けた。
ライザール様は驚かれたようだけれど、彼は私を拒まずに、『女』として受け入れてくれた。
彼はかつて上腕に爪痕を残したカルゥーという名の黒豹を相棒にしていたようだけれど、その子のことは数年たっても愛しているようだった。
少しだけその子が羨ましい・・たった一夜だったけれど結ばれた私は貴方の心に爪痕を残せたのだろうか?
ルト・・・貴方はいつか私を選んでくれるのかしら?
彼はこれからもこの国に必要な方だったし、私も己に課せられた役割を果たさなければならない。
一期一会の関係で終わる可能性だってあったけれど、私は彼に願いを託すことしかできなかった。
貴方には私の心は見えないけれど、感じてくださるかしら?
一夜の思い出に感謝を込め、私のエナジーを削り作り出した香しい芳香を放つ真紅の薔薇を彼の枕元に置いた。
その棘は貴方を傷つけないわ・・だから心配しないで
名残は尽きなかったけれど・・夜明けの前に私は立ち去った。