「まさかお前が私の元に来るとはな・・・麗しの舞妖妃殿。ああ・・シャナーサの衣装も良く似合っている・・それで?惚れた男のためなのだろう?その覚悟とやらを私に見せてみるがいい」
私室で寛がれているライザール様は私を迎え入れてはくれたが、その心はどこか頑なで愛を拒んでいた。
おそらくだがヴィンス殿下のために身を投げ出した私を許容できないのかもしれない。それに彼とは一度だけ戯れのキスを交わしただけだ、無理もなかった。
私は彼にとってただの一夜の恋の相手にすぎないのだと思い知らされるのは辛かったが、たとえそうでも構わなかった。
私にとってライザール様は二度と会うこともできないような極上の雄だったからだ。
彼の望み通りその欲望に従う私の姿に注がれる冷ややかな眼差しすら愛しくてならなかった。
一線を越えたことはなかったけれど、籠絡手段として男性を高める行為は経験済みだったしとくに抵抗もなかったが、その先は未知の体験だったから実は少しだけ緊張していた。
ライザール様の雄々しい精気が私の欲望に火を灯す
淫らに振る舞いながら、貞操を死守してきた私を知ったらライザール様はどう思われるだろうか。
興醒めされてしまうかもしれなかったが、ヴィンス殿下からいただいた機会を無駄にしたくはなかった。
ライザール様にとってはただの遊びでも私にとっては特別な夜だった。
だから必死で平気なフリをして蛇のように獰猛な彼を受け入れたけれど、生理的な涙が頬を濡らすのを止めることはできなかった。
私の涙を見た途端、凍てついたライザール様の心に慈悲が芽生えたようだった。
やはり彼は優しい方だった。
私が落ち着くまで待ってくれて、それからじっくり願いを叶えてくれたけれど、一方的な欲望解消ではなくて、互いの為の親密な行為へと彼の心境にも変化があったようだった。
「後悔はしないな?」
覚悟を問う彼の目を見つめたまま頷くと、彼は諦念のため息をつかれた。
結婚したわけでもない生娘と行為に及ぶのは私が考える以上に抵抗があったそうよ。
意外だったけれど王だからかライザール様は弁えた考えを持つ方だった。
彼に抱かれて初めて私は自分が女だったのだと実感することになった。
全身が脈打ち心臓になったみたい、それくらい彼との行為は衝撃的だった。
私も初めてだったけれど、彼も『処女』を抱いたのは初めてのようだった。
ライザール様が躊躇を感じてしまうのも無理はなかった。
それくらい彼との行為は無謀なものだったけれど、もちろん後悔はなかった。
私達って傷はすぐに完治してしまうけど、穿たれた喪失の名残を大切にするわ。