利害が一致したこともあり少しの逡巡の後私はヴィンス殿下に忠告することにした。
「ヴィンス殿下、テオドール様にはご注意されますように」
するとヴィンス殿下は驚いたようだった。やはり彼はテオドール様を信頼されているようだ。それだけ長い時間を過ごされたのならば無理もなかった。
だから私はさらに情報を開示する。
「ヴィンス殿下、ロラン様と共に私にパメラ様の行方調査を依頼されたのはテオドール様ですよ?つまりあの方はパメラ様を知っていたのです。それがどういうことかおわかりですか?」
私の言葉にヴィンス殿下は絶句する。怒りは見せつつも女である私の言葉に耳を傾けるあたりルーガンの王族としては稀な方かもしれない。
旧体制を一掃したい改革派のライザール王がだからこそこの方を見込まれているのかも・・ふとそう感じた。
やがてさらに冷静さを取り戻したヴィンス殿下は顎に手を当てて考え込んだ後、口を開いた。
「我々が隣国に攻め入った時、内通者の存在が大きかったと聞く。その者の手引きがあればこそ勝利できたのだが、今にして思えばその内通者こそロラン以外の唯一の生き残った女王、パメラだったのだろう。
そしてもしその時にパメラと通じていたのがテオドールであるならば、見知っていてもおかしくはないが・・
だがバカなっ!!アイツは俺の乳兄弟同然の男だぞ!?たかが女のことで俺を裏切るはずは」
信じたくない気持ちはよくわかる。しかし今となってはそうとしか思えなかった。
あれほどの闇を抱えたテオドール様の企みがパメラ様を取り戻すだけで済むはずはなかった。
「貴方はパメラ様をご存じなかったようですが、テオドール様の態度から見てもパメラ様の想い人は恐らく貴方です。
私に貴方を誘惑するよう仕向けたくらいですから。悪意はありますわ。
確かにクライデルは滅びてしまいましたが、女王だった身分のパメラ様と釣り合うにはそれに匹敵する地位が必要となるでしょうし、第一王継承者であられる貴方になにかあれば・・・
テオドール様はそんな夢を見たのではないでしょうか。過度の信頼は油断を招きますもの・・
王子の貴方の留守に国許で変事が起きたとしても私は驚きませんが」
私の言葉は今度こそヴィンス殿下を激高させたようだ。彼は腕を振りあげたが、ライザール王が目をかけていることを思いだしたのか思いとどまった。
やはり傲慢で短気ではあるが愚かな男ではないようだ。
先ほど一瞬だが私を奪ったライザール王に抱いた憎悪を思い出したのかもしれない。
彼の中で今テオドール様に対する信頼と彼の背信とで心が揺らぎせめぎ合っているのだろう。
思いが強かった分葛藤はそれ以上だろうことは想像に難くない。