蛇香のライラ ライザール 愛の鞭を持つ男

――ライザール王はご存じかしら?

 

彼は反社会的な者達への手厳しさでも名を馳せていた。

もしかすると国内の失踪事案についても調査している可能性はあった。

 

ふと思いつき、抜け出すためにヴィンス殿下の様子を窺う。

彼は飲酒の影響もあり夢心地のようだった。具合は安定している。

 

寝台に寝そべっているようにほどこした私は窓からそっと抜け出した。

 

空は飛べなくても壁や天井を這うくらいはできる。

 

月光も私の力を増幅させてくれた。

宮殿内の配置図はすでに潜伏済みのジェミルから得ていたので、迷うことなく王の私室へと到達できた。

 

まんがいち王が女性を侍らせている可能性も考慮して、窓から中の様子を窺う。

 

そんな現場見たくないわね

 

ついそんなことを考えてしまう。自分でも不思議なほど彼のことになると必要以上に感情的になってしまっている気がした。

 

幸い室内は無人だった。ライザール王がまとうほのかな香水と水タバコの残り香が漂っていた。

 

あ・・・彼の香りだわ

 

王の姿がないことに安堵と落胆両方を感じた。

 

貴方はどこで過ごしていらっしゃるのかしら?

 

彼のことが気になってしょうがないものの、住人が不在なうちに調べなくてはならなかったので気持ちを切り替える。

 

窓から忍び込み周囲を見渡した私の目に様々なものが浮かぶ。

月明りがあるとはいえ室内は灯りが消えていたので薄暗かったがたとえ闇の中でも夜目が利く私には日中と変わりなかった。

 

とりあえず立派な仕事机から調査する。

間もなく名前を記した紙を発見した。

 

どうやらそれは失踪者のリストのようだった。

名前と年齢、職業など個人情報が記されている。

 

ライザール王もやはりただの家出ではなく事件として調査していたようね

 

同じ着眼点であることに安堵しつつライザール王のものと思しき走り書き確認する。短期間で被害者を割り出し情報を精査しているなんて、なかなか機動力がある方のようだ。

 

彼は背後に闇組織の関与を疑っているようだった。

 

店主様も同様の懸念を示されていた。

このシャナーサにおいてももちろん非合法ではあったが、需要があれば供給があるのは世の常だった。

 

闇組織の関与があるならば失踪者の発見は容易ではなかった。

 

彼女達を求める者達の目的も様々だからだ。

 

愛玩ならばまだ生存の可能性はあったが、わざわざダークサイドに集う者達が被害者の人権に配慮するとも思えなかった。

 

いかにライザール王が死力を尽くそうとも、闇は尽きることはない。

 

それが現実だった。