その時だった、周囲の闇を払うようなけっして埋没することもない、際立った深紅の光輝を感じた。
その強い眼差しに惹かれるように私は彼を見出すことができた。
――ああ、お願い助けて!!
私の心の声が通じたのだろうか?
「我が国の民が失礼した。ご容赦されよ、ヴィンス殿下・・女、すぐにこの場から立ち去るがいい」
周囲を圧倒するかのような良く通る威厳のある声の主に私は救われた。
それがライザール王だった。
初めて間近で見た彼は威風堂々とした人物だった。
漆黒の巻き髪で褐色の肌に燃えるような琥珀色の双眸はけれど招かれざる客である私を訝しんでいた。
彼にとっては私が異物なのね。
主催者のライザール王は早急に場を収めようとしていた。
王の登場に畏まるヴィンス殿下と、気後れしたようなロラン様の拘束が緩んだのを機に私も足早にその場を去る。幸い見咎められることはなかった。
王宮内で行われる会議の出席者目当てに歓楽でもてなす女達の一人と思われたのだろう。
強い視線を感じて振り返るとまだライザール王がこちらを見ていた。
――あの方がライザール王・・なんて力強い鼓動なの・・・それにあの眼差し・・目が離せないわ
射すくめるような強い眼差しの野性味のある若き王だったが、酸いも甘いもかみ分けた成熟した魂の持ち主だった。
名君と呼ばれるだけはあるようね
何よりも圧倒的な存在感のある美丈夫だった。
私変だわ・・どうしたのかしら・・・この感じはいったい・・
それは遠い昔に忘れ去っていた甘い恋の予感だったがその時の私は久方ぶりすぎて気づかずにいたのだった。
だって彼は随分年下だったのですもの。
見た目が若かろうとすでに私は150歳だった。
人の一生分はとうに生きた私には老いも若きも全て年下だった。
もっとも私よりはるかに長生きされている店主様からはいまだに子ども扱いされてしまうけれど・・・
人だった時はエンパスの力に惑い、修道院にて神に祈る日々だったが病魔におかされ若くして死に直面した時に店主様に救われてナイトブリードになった私だが、未婚で恋も知らない初心な娘だった。
長生きしててもそれは今もさほど変わりない。
それに比べてライザール王は相応の経験を積まれた方のようだった。
どうすれば彼のような方を本気にさせることができるのか見当もつかない
やだわ・・私ったらさっきからあの方のことばかり・・
仕事に集中しなくては宮殿まできた意味がない。滞在できる時間は限られていた。
