「私の雇い主の方は病気を患っており、治療薬を必要としています・・」

 

それから私は彼にそのためには王の血が必要だったのだと打ち明けた。

 

行為の最中に採血するのだと説明するのはさすがに恥ずかしくもあったが、彼はいたって真面目な顔で聞いてくれたので話しやすかった。

 

私の話を聞き終えた彼は、しばし逡巡した面持ちになったあと疑問を呈した。

 

「失礼ですががお嬢さん・・貴女は騙されているのではありませんか?」

 

!!

 

それは思いもかけない意見だった。てっきり王から血を取ることの是非を責められると思っていたのに・・・

 

「貴女は雇い主の方を信頼しているのでしょうが、私にはとてもまっとうな方とは思えませんが。ジェミルの雇い主でもあるのでしょう?ううむ・・今すぐその方と手を切った方がよいのでは?聞けば聞くほど胡散臭い話ですよ」

 

!!

 

正直店主様を悪くいわれるのは嫌だったけれど、でも彼はジェミルの父親だった。

 

親として暗殺騒ぎに巻き込まれている息子を心配するのはごく自然だったし、まるで娘を諭すように言う彼の言葉に反発は感じなかった。

 

それに確かに指摘されてみればその通りかもしれない。

 

「私はジェミルをずっと探していました。そのことは王もご存じだった。もし息子が名を告げればあんなにむごい目にあわずに済んだのではないかと思うと・・」

 

 

ジェミルに謝ることはできなかった私は身のすくむ思いだった。

 

「ライザール様は悪くありません。私が悪かったんです・・ジェミルは私の弟みたいな子で大事だったのに・・私は結局ライザール様を選んでしまいました」

 

言葉にすれば陳腐だった。確かに王の暗殺を企んだ暗殺者への尋問だったが、実情は三角関係の果ての痴情のもつれとしかいいようがない。

 

人生経験豊富な分彼は理解を示してくれた。ジェミルの傷心も私の葛藤もライザール様の嫉妬も酸いも甘いもかみ分けた彼は察したのだろう。