極限状態だった俺は脳みそをフル稼働して答えをはじき出す。

 

もしコイツが本物のオーサマだとしたら?俺は?

 

「・・・アンタが本物なんだな?」

 

確信があったわけじゃない。ただの勘だった。

なによりもこんな場所まで誰にも見咎められずに侵入できるのがその証拠に思えた。

 

そういえばオーサマは体が弱いって話だった。だけど俺が見たライザールの奴はどう見ても元気でしぶとい野郎だった。

 

答えを待つ俺に『親父』は頷いて見せた。

 

 

それは俺が欲しかった答えだった。俺を捨てた事を恨んだこともあったが、目の前で感動に震えるソイツはいかにも善良そうだった。

 

なによりも俺の無事を喜んでくれただけでよかった。コイツなら信じてもいい。

 

「聞いてくれ。アンタが親父なら俺にはアンタを暗殺する気はない。だから俺を信じてここから出してくれ!俺にはどうしても助けたい奴がいるんだ」

 

俺の必死の訴えが伝わったのか、『親父』はしばしの躊躇の後、牢を開け俺を解放してくれた。

 

『親父』は俺を恐れることなく抱きしめてくれた。

 

 

俺より背は高いけど物腰が穏やかなせいか脅威はない。俺も思い切って親父の背を抱き返した。

 

「ああ・・・ジェミル・・お前が生きていたなんて・・それだけで私はっ」

 

俺を預けた家の裏切りを親父は知らなかった。そのまま行方知れずになった俺のことを諦めずにずっと探していてくれたのだ。

 

シリーン以外家族なんていらないと思ってたし、家族の愛なんて知らなかった俺には降ってわいた話だったが抵抗はなく驚くほどすんなり親父の存在を受け入れることができていた。

 

今となっては親父のこともあのオーサマのことも狙う気はなかった。

 

シリーンを奪ったアイツのことはムカつくけど、シリーンがアイツを必要なら俺は奪うことはできなかったし、シリーンのことも親父のことも俺にとって大切な二人をあのクソッたれな店主から守りたかったから。