彼女はレイラではなかった。これはもう動かしようのない事実だった。

 

だがだからなんだというのだろうか?それがそんなに重要なことだとは思わなった。

 

彼女が偽物であるならば本物のレイラがいるのだろうが、私を裏切ったその女がどこにいてなにをしていようとも今更だった。

 

私はこの女が欲しい。本音を隠し彼女の拙い誘惑に乗ったふりをしたのは私の方だった。

 

はじめてだった彼女を奪った今となっては共犯者と思しき男の存在すらどうでもよかった。

 

あの男と彼女は清らかな関係だった。それだけで十分だ。

 

確かにあの男は私の命を狙ったが、心当たりがありすぎて今はどうでもよかった。

 

実行犯を確保した以上、とりあえずの脅威は去ったのだから。

今はただ、誰にも邪魔されずに彼女との時間が欲しかった。

 

横抱きにした彼女の仰向いた顏には隠しようのない憔悴が浮かんでいた。

 

挑発的な眼差しも今は閉じられている。彼女にひどい仕打ちをしたのは私だというのに、胸が痛む。

 

「おいその女をどうする気だよ!!」

 

存在を失念していたが、全ての行為は奴の前で行われた。

 

彼女の気持ちはわからぬが、あの男は明らかに彼女に好意を寄せているようだからさぞ無念だろう。

 

惚れた女を奪われても口を割らず、恨みがましさを含んだ渇望の眼差しで我々を見ていた、その程度の男に今は用はなかった。

 

「おい、そいつを牢に放り込んでおけ」

 

問いに応えず、警護の兵に命じると、男は両脇を抱えられ引っ立てられていった。

 

静けさが辺りに満ちる。これでやっと二人きりになった。

 

せめて償いに身を清めてやりたかった。

彼女を抱いたまま大浴場へと向かう。

 

彼女の身体をタイルの上に降ろした私は手早く服を脱ぎ去り、再度抱きあげた彼女の身体を湯に浸した。

 

湯の中に手を付けたまま撫でると、心地よいのか彼女がかすかに身じろいだ。

 

しばし後湯で温もった彼女の身を拭き、待機していた侍女たちに任せる。

 

私もまた着替えて、身支度ができた彼女を抱いたまま自室へと戻り寝台にそっと横たえた。

 

穏やかに眠る彼女の横顔を窺う。

 

この女が私を選ぶならばどのような秘密を抱えていようと、暴く気は起きなかった。

 

それこそ今更だった。

 

彼女はあの男ではなく私を選んだのだから。

蛇香のライラ ライザール×シリーン 愛の虜囚