ドキドキ

人形然としたシリーンを抱き上げ、そっと寝台に横たえる。

 

身体は強張っていたが球体関節人形のようになんとか寝かせることができた。

 

並ぶように私も身を横たえる。

 

「シリーン・・・愛している・・・・クッ」

 

真正面を見たままの彼女の横顔に告げた後、腰に差した小刀を取り親指を傷つけた私は滴る血を彼女の唇へと向けた。

 

ドクンドクンドクン

 

出血はわずかだったが、僅かな血であっても彼女を目覚めさせるには十分らしい。

 

あとは目覚めた彼女自ら私の血を欲するままにすればよい。

 

血が唇の隙間に滲み込んだ瞬間、彼女の開かれた双眸に意思の光が宿り空気を求めるようにわななく唇が呼気を放つ。

 

「・・・・はあっ・・・・」

 

みるみる人形に生命がみなぎりシリーンは無事復活を果たすことができた。

 

「目覚めたんだなシリーン、さあ私の血を飲むがいい」

 

私の呼びかけに応じるようにゆらりと身を起こした彼女は寝たままの私に覆いかぶさると変化させた牙を私の首筋に突き立てた。

 

――クッ

 

急所へのダメージに痛みを覚悟したが、なんというかそれは至高の快感だった。

 

同族間で行われる吸血行為は愛の行為と同等だと店主が言っていたが、シリーンは店主の血をもらったが店主はシリーンの血を飲んでいないらしい。ジェミルも同様だった。

 

いうなれば彼らは主である店主の家族同然ではあったが、親密な仲ではなかった。

 

互いに血を与え合うことで『恋人』になれるのだとか。

 

私はシリーンに血を捧げたが、彼女が私に血を与えるのかそれは彼女次第だった。

 

長く生きる彼らの考え方も様々で永遠に一人に縛られるのを厭う者もいれば、未来永劫ただ一人と番う者もいるらしい。

 

私は・・できることなら彼女に選んで欲しかった。

 

だがあくまでも決めるのは彼女だった。

このまま限界まで失血して命を落とす可能性だってあった。

 

意識が朦朧としてきたが私は満たされていた。

 

彼女の糧となれるのならば本望だった。