馬車に揺られ陸路を進むこと数日、私は単身ルーガン王国へと降り立った。

 

出迎えたヴィンス王は激動の一年を経たせいか王者の風格が出てきたようだ。

 

滞りなく式典を終え、私はかつてクライデル領だった今やロランが領主として管理する城へと案内される。

 

「ようこそいらっしゃいました。ライザール王長旅でお疲れでしょう・・さっそくお部屋にご案内いたします」

 

久々に再会したロラン殿は相変わらず浮世離れした雰囲気はあったが、違うのはいつも手にしていた人形の入った鳥かごを持っていないことだった。

 

「こちらこそご招待いただきありがとうございます。ロラン殿もお変わりないようだ」

 

通り一遍の挨拶を交わしながら私はあたりを窺った。

 

城はかつて戦乱があったせいかところどころその名残が生々しく残っていた。

 

さらに内装はまさに異様な雰囲気を醸し出していた。

 

ルーガンにより制圧され解放されるまで城の中には男たちを閉じ込めるための牢がしつらえられていたらしい。

 

その名残なのか各部屋の扉には通常ではありえない鉄格子がはまっており、まさに虜囚のような扱いをされていたようだ。

 

「これは・・興味深いが」

 

「では入ってみますか?落ち着きますよ?」

 

各国の風習や文化を収集するのが趣味の私だったが、さすがに遠慮した。

 

こんな場所に閉じ込められ大人の女達のおもちゃにされていたとは。

 

歪な心が形成されるのも無理もなかろう。

 

その晩は案内してきたヴィンス殿とともに晩餐をいただき案内された部屋で早々に休むこととなった。

 

部屋に引き上げようとする我々をロランが引き止める。

 

「ああ・・そうでした。ヴィンス王にライザール王、お一人寝はお淋しいでしょう?よろしければお好みの方を手配させていただきますが?」

 

堅物のヴィンスは丁重に断り私もそれに倣う。

 

ここまで来たのはシリーンを取り戻すためだった。

今更他の女に用はない。

 

「そうですか、それではおやすみなさい」

 

ニコニコと笑顔で我々を見送るロランの手前大人しく部屋に引き上げるしかなかった。

 

疑惑はあくまでも疑惑だ。下手に勘ぐればシリーンを隠されてしまうかもしれない。

 

ましてやここは敵陣だった。

私に何かあれば国際問題に発展しかねない。