「おそらくだけどシリーンはロラン様にその本に載ってる方法で血を抜かれたのだろう。

 

死にはしないがまさに仮死状態というところかな。

 

彼は今ヴィンス王のはからいで領主になっているらしい。

残念ながら詳しい場所まではわからなかったが」

 

!!

 

「ヴィンスはそのことを!?」

 

彼は公明正大な王だった。そんな異常事態を放置するとは思えないが。

 

「知らないのだろうね。知っていたらさすがに放置はしないだろう。表向きロラン様は恭順を示しているし、まあ言ってみればこれはプライベートな問題だ」

 

 

私にはとてもそこまで割り切れるようなものでもなかったが、ようはそういうことなのだろう。

 

少女失踪事件はある日を境にぴたりと収まった。それと代わるようにシリーンが失踪してしまった。

 

ロランがその少女達の失踪に関わっていたというのなら、なんらかの取引をロランとしたのかもしれない。

 

「では私に命を捧げろと言うのは・・」

 

確認のため問う私に店主は笑顔で言った。

 

「そうだよ?君の考え通りだ。残念ながら同族の我々では彼女に血を与えたところで復活は叶わない。

 

彼女を呼び覚ますにはとびきり新鮮な血が大量に必要だ。それも愛する者の血でなければならない」

 

 

なるほど店主の要求は理解できた。彼女と愛を交わした私の血を欲する理由にも納得する。

 

 

「そ~だぜありがたいと思えよなオッサン!誰でもいいならとっくにあのガキシメてるって。

 

あのヤロ~おかしな結界張ってて俺は近寄れなかったがシリーンの血の匂いがしたから間違いないぜ。アイツはあの城のどこかに幽閉されている」

 

物騒なジェミルの言葉に苦笑をもらす。

 

たとえこの身を捧げることになったとしても私は彼女を取り戻したかった。

 

この一年寝ても覚めても彼女の幻想から逃れることは叶わなかった。

 

それほどまでに彼女は私の心を奪っていた。

 

もし万が一私になにかあったとしてもしっかりものの弟がいる。

だから心配はなかった。

 

「なるほど要求はわかった。だがルーガン領へ乗り込むには相応の手続きが必要だ。

 

幸いなことにヴィンス殿の在位一周年の記念がまもなく執り行われる。私なら隣国のよしみで快く招待してもらえるだろう。

 

その折、領主となったロラン殿も紹介してもらえばよい」

 

彼女を救うために血を捧げるための迷いを一切見せない私を感じ入ったようにアイーシャがうっとり見つめながら「これぞ愛ね」とはしゃぎ、ジェミルは「チッ」と舌うちで返す。

 

「話が早くて助かるね~ではよろしく頼みましたよライザール王。

我が娘をどうか取り戻していただきたい」

 

「承知した。私に任せてもらおうか」

 

それからは早かった。交渉の末ヴィンス王から正式な招待を取り付けた私は祝賀記念の式典へ参加することになったのだった。