店主の懸念はわかったが、それでは私はどうすればよいのか。
「私にいったいどうしろと?」
直球の質問をぶつける私を見定めるように店主が感情のこもらない眼差しで見据える。
「君はシリーンを愛している、そうだね?」
店主の問いに私は頷き返す。
気づいたら本気になっていた。彼女は灰色だった私の人生に軽やかに舞い降りて鮮やかな深紅の色に染め上げた。
今となっては彼女は私の「運命の女」に他ならなかった。
だが思慕はあくまでも思慕だった。
店主の突き付ける要求は私の考えを凌駕するものだった。
「では・・君は愛するシリーンのためにその命も捧げてくれるのかい?」
!!
「それはどういう・・」
だが今度もまた血気盛んな声に遮られる。
「いい加減覚悟決めろよ!!ってことに決まってんだろ!シリーンのために命捨てる覚悟があんのかって聞いてんだよ!!オッサン」
ジェミルの言葉が胸に刺さる。
この場に私が呼ばれた理由を遅まきながら気づいてしまった。
無言で私を取り巻く彼ら・・
店主とジェミルとアイーシャの双眸が血に飢えたような不穏な色を宿す。
ここに生者はいない・・ゾワリと総毛立つ思いだった。
「お察しの通り我々は人ではない。いわゆるナイトブリードと呼ばれる存在だ。私もジェミルも・・・そしてもちろんシリーンもだ」
!!
やはりそうなのか、と妙に納得してしまう。
彼女のもつ透明感は生者のもつそれではなかった。
だからといって死者というものでもない、まさに闇に属する者だったのだ。
「私は違うわよ~ただの支援者の一人ってとこかしら?闇の一族が実在したなんて夢みたい。まさに永遠の美の一族なのよ?
なのに血を抜かれるなんて~あの娘にはそんなこと必要ないのにね~」
なんの皮肉かしらと肩をすくめるアイーシャの言葉に店主が頷く。