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湯で身を清め、私の夜伽をするために現れた彼女はいつかのような妖艶さはなく、むしろ殉教者のようだった。
私に好意があるようなそぶりを見せても、これはさすがに不本意だったのだろう。
だが生憎と私は遠慮する気はなかった。
見え見えの据え膳を喰うなど気が進まないが、いずれにせよ私は彼女が欲しかったのだ。
まさに一夜(ライラ)の恋に相応しい女だった。
「どうした?私をその気にさせてみるがいい」
どこか緊張した様子の彼女を訝しげにみやる。
男二人を手玉にとったと思しき技を披露すればよいだけなのに。
返事をせぬのはルーガン流を意識してのことだろう。
以前見かけた時は腕輪をしていたが、私とのキスを見咎めたヴィンス殿下が取り上げたようだ。
だんまりを決め込む頑なな彼女の態度が癇に障り私も意地になってしまった。
まさに鳴かぬなら鳴くまで待とうというべき心地だった。
こうして私と彼女の根競べという名の艶事が開始された。
私の挑発で覚悟を決めたのか彼女はまとっていた薄絹を脱ぎ捨てヘナタトゥーをあしらった肌も露わな妖艶ないでたちで私が寝そべる寝台へと身を乗り出した。
だが私はキスを許さなかった。
今夜の彼女の唇にはもっと違うことをしてほしかったからだ。
私の視線に促された彼女はためらいがちにそれに従う。
紅を引いた唇をしめらせ一心不乱に奉仕する様は淫らで私の欲望を的確に煽るものだった。
慣れた仕草により苛立ちが募る。
あの時は確かに彼女に対する愛しさが募ったが、今夜のこれは愛の行為ではなくただの欲望からだった。
「もういい」
行為に飽いた私はさっさと彼女を組み敷くとことに及ぶ。
キスも愛撫も睦言すら必要だと感じなかった。
これはただの暇つぶしに他ならない。
「・・・・ッ・・・・」
だがそこで異変が起きた。
なんと驚いたことに彼女は初めてだったのだ。
よほど辛かったのか彼女の目は濡れていた。
言葉を発するなというルールを守るように悲鳴を飲み込む彼女の姿を前にそれ以上ことに及ぶ気にはならなかった。
一端身を離し、再び抱き寄せなだめるように温もりを与えるうちに彼女は落ち着きを取り戻す。
「声をこらえなくてもいい。私はルーガンの者じゃないからな。
むしろお前の声は心地よい」
諭す私に彼女は弱々しく頷くとかすかに嗚咽をもらした。