彼女との禁断の口づけ以降、私はもっと彼女を求めるようになっていた。

 

しかしあれ以降私を気にしたヴィンス殿下の計らいか彼女が一人になることはなかったのだが。

 

そんな折だった。ルーガン王国でクーデターが起きてしまったのは。

 

首謀者はヴィンス殿下と共に会議に参加していたテオドールなるものだった。

 

王は謀殺され国境は閉鎖されたが、多くの避難民が我が国へも押し寄せてきて対応を余儀なくされた。

 

当時混乱した様子のルーガン陣営を余所に一人ふらふらと彷徨う浮世離れしたロラン殿の様子を私もそれとなく窺っていたことをふと思い出した。

 

なんというか変わった御仁だった。

 

およそ常識とかけ離れている。手には常に姉を模したと言う人形を入れた鳥かごを持っていた。願いが叶うまじないらしい。

 

不気味としかいいようがない。

彼もシリーンに付きまとう男の一人だった。

 

なんでも彼女はいなくなった姉に似ているらしい。というより言動からはただの色欲にとりつかれた妄想狂としか思えないがはたして。

 

今にして思えばだがロラン殿が反逆者となり処刑されたテオドールと一緒に依頼に来たと言うのがひっかかった。

 

どうやら店主はなにがしかの情報を得ているらしかった。

 

だがそれを余所に私は彼女と初めて過ごした夜の情景を呼び起こす。

 

旧知の仲だった友の裏切りにあい、父王を謀殺されまさに崖っぷち、失脚の憂き目にあったヴィンス殿下だったが彼は諦めてはいなかった。

 

手持ちの手勢はわずかでほとんどが敵に寝返る中、

彼は隣国の王である私の力添えを欲していた。

 

だが彼に残された忠臣も手持ちのコマもわずかだった。

苦慮の末彼は唯一残された切り札を出したのだ。

 

まさにジョーカーだった。

彼は私にシリーンを差し出したのだ。

 

もちろん私が要求したわけではい。

だがヴィンス殿下は私の欲望を察したのだろう。

 

女を使い私の歓心を得ようとするなど本来は許しがたいものではあったが、私もまた彼女を欲していたから効果はあった。