「自己紹介なさい」

 

店主の言葉に顔を背けていた男の機嫌が一層悪くなる。

 

(確かジェミルと呼ばれていたな・・シリーンとどういう関係なんだ?)

 

店主に促されたジェミルはしぶしぶといった様子でぶっきらぼうに名乗った。

 

「俺はジェミルだ。覚えなくていいぜ?俺の名前を呼んだらドクロす」

 

なんとも無礼な男だが、まあいい。だが名だけでは肝心のことがわからない。

 

「シリーンとはどんな関係だ?」

 

態度の悪さに苛立ちが生じながら質す私をジェミルはシニカルな笑みで挑発的に睨み据えた。

 

「決まってんだろ!アイツの男だよ」

 

 

「バカな・・・お前ごとき男をシリーンが相手にするわけない」

 

私と愛を交わした彼女がこんな若造とも関係を持つなど信じがたかった。

 

「てめっ!!ケンカ売ってんのか!やっぱドクロす!!」

 

ジェミルは挑発に乗るタイプらしい。

冷静さを欠く情緒不安定さといい危ない男だと認識を改める。

 

しかしきゃんきゃんわめくジェミルがハッとした様子で黙り込んだ。

 

無言の店主の圧がよほど堪えたらしい。

力関係ははっきりしていた。

 

「愚息が失礼。こう見えても私の息子でね。いやはや礼儀を知らなくて申し訳ない。礼儀作法習得も兼ねてヒラール宮に出向かせたのにシリーンばかり追いかけて・・・ははは」

 

店主の揶揄する言葉に見る見るジェミルが赤くなる。

なるほどキレやすいが純情な男なのだろう。

 

「この男が貴方の息子だというのか?ではシリーンは」

 

嫌な予感しかないが構わず私は問う。

己に与えられたチャンスは最大限に生かさなければ意味がない。

 

「お察しの通り、娘ですよ。可愛い私のシリーンはね」

 

まったく似ていないが親子だという認識でよいらしい。

 

だがジェミルの先ほどのシリーンに対する執着ぶりを見る限り、

血のつながりはないのかもしれないが。