「大丈夫か?レイラ」
感動に震える私にライザール様が優しく尋ねる。
初めてのことばかりで緊張する私を気にかけてくださる、本当に頼もしくて優しい方だった。
心配していた両親との対面も済みあとは初夜のみとなった。
気づいたらもう何度も通ったライザール様の私室で二人きりとなっていた。
服もいつの間にか夜着になっていた。
ライザール様も素早く部屋着姿になり寛いだ様子だった。
私は異物ではなくすでに彼の風景の一部として認識されているのね。それがなんだか嬉しかった。
すっかり彼の私室に居場所を確保したらしいカルゥーでさえ今夜は別の部屋で過ごしているようだった。
微かに香が焚き染められた部屋に本当に二人きりだった。
初夜といえば夫婦にとっては特別な夜だったけれど、すでに寝所で何度もご一緒しているからかさほど緊張はなかった。
これがもしかすると自由恋愛の効果というものなのかもしれない。
結婚自体は親の取り決めだったのだとしても、互いに駆け引きをして深く知りあう機会を設けたことが幸いした。
もし今夜初めてライザール様に会い、よく知らないまま彼に抱かれなければならないのだとしたら「処女」ではない私は気まずい思いをしただろう。
下手をしたらそのまま離縁されてしまったかもしれない。
でも私の心配を余所にライザール様はありのままの私を受け入れてくださった。
もちろんあの方の方が経験豊富そうなことを考えれば私だって気にならないと言えば嘘になるけれど。
恋をしてあの方を愛して自分が案外嫉妬深い女だって気づいてしまった。
それでもあの方の心の拠り所になれるような女でいたいから
これからも嫉妬はほどほどにするつもり
ライラはあれ以来まったく姿を現さなくなった。
彼女は私の大切な記憶の一部を握ったまま沈黙していた。
けれど今の私にとって大切なものがなにかわかっているから
不思議なほど喪失感はなかった。
だって私にはライザール様がいらっしゃるから
「レイラ・・さあ私の元へくるがいい」
寝所に寝そべるライザール様が誘惑するように私に手を差し伸べる
今夜正式にこの方の妻になったのだと思うと今更ながら胸が一杯だった。
だから私も誘惑するような眼差しで彼を見つめ返す
でも近づいた途端彼に腕を引き寄せられて、腕の中に込められてしまう。
「ようやくお前を手に入れることができたな。安心するがいい・・・
私は生涯お前以外の女を妻には娶らない。だから長生きしてくれよ?決して私を一人にするな」
!
一夫多妻が許された王だけに、それは相当の覚悟を必要とするはずだった。
何も気に入った女性を侍らせるだけではなく、政略的な意味合いが強いからだ。
幸いライザール様は高度な政治的駆け引きによりアリ家の支援を受けることができたみたいだししばらくは安泰かもしれないけど・・・
それでもたとえその言葉が新妻の歓心を得るための閨の睦言だとしても私は嬉しかったから・・
パワーバランスに影響する結婚はともかくライザール様は
堂々と他の方を選べるけれど、私は彼しか選べないもの
それが気持ちの問題だけではなく、本能的に私が彼を求めているからよ。
そして不思議だけれど私はライザール様の言葉が嘘ではないと感じた。
