「アイーシャ!?どうやって・・」

 

ここはヒラール宮の中庭前の廊下なのだ。

 

庶民のアイーシャがどうやってもぐりこんだのか不思議でならなかった。

 

するとアイーシャは軽快な足取りで駆け寄ってくると私の疑問を当然と思ったのかあっさり教えてくれた。

 

「ふふふ~持つべきはコネのあるお客様ってやつよ~。カマルの常連さんにこっそり入れてもらっちゃったの~。一応身分はレイラ様の侍女って名目だけどね~どう?びっくりした?」

 

驚いた私は素直に頷く。

 

確かに社交場であるカマルには身分の高い方達も来るし、美人なアイーシャは人気ものだから特別な伝手があっても不思議はない。

 

「そうだったの。なんだか久しぶりね、アイーシャ・・元気だった?」

 

アイーシャにはたくさんよくしてもらった。

 

思えばライザール様と過ごした夜に身に着けていた勝負下着は彼女からのプレゼントだった。

 

思い出しても自分でも大胆だったなって思うけれど。効果はてきめんだったのよね。

 

ライザール様も殿方だからああいうのが嫌いじゃないみたい。

 

「もっとも私はお前の生まれたままの姿が一番好きだがな・・・」

 

そう耳元で囁かれた時は火照ってしまったもの。

 

「あ~赤くなってやらし~い。思いだし笑いしちゃって~。なに思い出してるの?いいなあ~王様との結婚が決まったんでしょう?すごいじゃない!カマルじゃその噂でもちきりよ~おめでとう!さっすが私のシリーン・・じゃなかったレイラ様だっけ?ああん・・・ややこしいなあ。そう思ったらなんか複雑よねえ?」

 

 

私は躊躇いがちに頷いた。アイーシャの指摘は当たってた。

 

求めてもらえたのは「レイラ様」ではなく私自身でライザール様が察していらっしゃるとはいえ、やっぱり騙していることに代わりはないからだ。

 

王にとって私がレイラではなく価値のない密偵などと知る意味はないのだから。

 

「あっ・・・ごめ~ん。気にしちゃった?王様が好きになったのはアンタなんだから気にすることないわよ。ね?」

 

アイーシャの言うとおりだった。覚悟を決めた以上くよくよしたってしかたない。