夢心地の一夜が明けて、身も心もライザールさまと結ばれた私は満たされた。
それからしばらくして、ついに彼との婚礼の日取りが決まった。
もちろん私は本物のレイラ様ではなかったし、密偵として行方知れずの彼女が見つかるまでの時間稼ぎの依頼を受けただけだったけれど。
それなのにいいのかしら?
そう思わなくもなかったが、昨夜ライザール様から
「私はお前が何者でも構わない。ぜひ私の妻になってほしい」
とありがたいお言葉を賜った。
つまり、あの方は私が偽物だって見抜いているってことになるわけで・・・
私の偽りの身分ではなく、私自身をお気に召していただけたってことになるのかしら
それがなんだかとても光栄で恐れ多かったけれど
私の気持ちはもはや決まっていた。
私もライザール様をお慕いしていたから。
初めて会った時は威風堂々としたお姿に気後れしてしまって緊張したこともあったけれど
王妃として相応しいかどうか、常に私の振る舞いを見極めようとされていた。
そんな厳しさと優しさを秘めたあの方に、気づいたら心惹かれてしまった。
彼は私がこれまであったことのないタイプの異性でもあった。
初めて触れることができたあの方の胸に飛び込んで受け止めていただけた時は嬉しかった。
好きになればなるほど臆病になってしまって、あの方に他に想う方がいることが辛くて「ライラ」を頼ってしまったこともあったけれど
あの方は私を選んでくださった。
だから私もあの方を人生の伴侶として選ぼうと決めた。
迷ったけれど、これまで散々お世話になった店主様に不義理をするのが心苦しかったから鳥(手紙)を送った。
「ライザール様を愛しています。求婚されたのでお受けするつもりです」って
店主様の返事を待つ間、不安でたまらなかった。
もし本物のレイラ様が見つかったらこの婚姻はどうなってしまうのか、そんな利己的な考えをもってしまう自分に嫌気がさすほど
待つ時間は辛いものだった。
そんな悶々とした数日間が経つ間も婚礼の準備は粛々と進んでゆく
アリ家の方達も参列されるというのに
幸せの絶頂だからこそ挙式が無事終わるのか不安は尽きなかった
ライザール様は
「全て私に任せるがいい」っておっしゃってくださったから、恐らくアリ家の方ともお話になるのだろう。
だから私はあの方を信じて待つことに決めた。
シャナーサでは珍しいルーガン王国産の芳香を放つ色とりどりの花やたくさんの豪華な贈り物に囲まれた私が名実ともに王妃になる。
シリーンとしてではなくレイラとしてあの方の妻になるのだ。
そう思えば少しだけ寂しさを感じたけれど、
葛藤はあっても結局は全ての真実を明らかにする勇気はなかったから。
でもこの胸を満たすこの熱い想いだけは本物だった。
政略的な意味合いの結婚ではあっても、そんなものは私の心にはなんの影響も及ぼさないものであり、
私にとっては純粋に心から想う方と交わした約束だった。