そんな俺を身請けしたのが「店主」だった。

俺をじっくり観察した後、店主は言った。

 

「ふうん・・君ならあの娘も気に入るかな。読み書きはできるかい?」

 

当然できるはずもなかった。

無言で首を振る俺にそいつは言った。

 

「なら私が教えてあげよう。なにコツさえつかめば簡単だ」

 

そう言ってそいつは俺を連れヤサに向かった。

娼館にでも売られてしまうのかもしれないって自暴自棄だった。

 

だけどついたのは娼館じゃなくてショーサロン「カマル」だった。

 

そこで俺はアイツに引き合わされたんだ。

 

――シリーン

 

色が抜けるように白くて銀糸のような髪がサラサラで胸が・・そのっ・・大きくて柔らかそうでお姫様みたいで・・・

 

すげー美人だった

 

アイツは俺の汚れ具合を見て驚いたようだったけど、屈託のない笑顔で言った。

 

 

「私はシリーンよ、貴方はなんていうの?」

 

 

名前を聞かれたことなんて初めてだった。

 

しかもこんなキレイな女を見たのも初めてだった俺は赤くなって声もうわずっちまったけど、でも今度は大丈夫だ。

 

だって俺にはアイツにもらった名前があるから。

 

「・・・・ジェミル」

 

名前をつけてくれたライラ・ヌールに顔向けできない俺がこの名前を名乗ることにふと後ろめたさを感じた。

 

でもこの時の俺には名前以外大切に思えるものなんて持ってなかったから

 

 

俺の宝物をこの女に知ってほしくって

 

「ジェミルっていうの?そう、とっても素敵な名前ね。よろしくね、ジェミル」

 

名前を呼ばれて褒められることがこんなに気分がいいものだって俺は初めて知った。

 

俺を殴ったり唾を吐きかけたり、罵倒しない初めての女だった。

 

照れたまま無言で感動する俺の服にアイツが手をかけた。

 

「じゃあジェミル、さっそくお風呂に入らないとね。蒸し風呂よりお湯沸かした方がいいかしら。はい脱いで脱いで」

 

!!

 

「やめっ・・・シ、シリーン」

 

服を引っぺがされたこともだけど初めてアイツの名前を呼んじまって

 

恥かしがって抵抗する俺をてぎわよく身ぐるみはがすアイツは楽しそうで

 

見惚れちまった俺はアイツのなすがままだった。

 

アイツが俺にジェミルの綴りを教えてくれた。

 

 

ライラ・ヌールが名づけてシリーンが綴り方を教えてくれて

 

また俺に宝物ができた。