注本物のレイラ視点のエピソードとなってます(心の闇ダダ漏れなんで閲覧注意)

 

それから間もなくだった。

 

何が不満だったのか知らないけれど、シリーンが逃亡した。

 

なんて無責任な娘なのかしら。王に侍る栄誉を私から奪ったくせに。

 

身分の卑しい女はこれだから・・

 

口ではそう言いながらも内心私は嬉しくてたまらなかった。

 

あの娘がいなくなれば、今度こそあの方は私を選んでくださるかも・・

 

そんな淡い期待があったのは事実

 

でも現実はそうは上手くいかなかった。

 

シャナーサに来た「先生」は地下で極秘研究を行うことにした。

 

規制の緩いわが国でも人道に反する実験を堂々とは行えないからだ。

 

そこで身分を偽った「先生」は高貴な方達のための社交場を開くことにした。

 

拠点のひとつショーサロン「カマル」はこうして誕生した。

 

「先生」も「店主」へと身分を改めた。

 

伝手を使いシリーンの行方を捜していた店主の元に朗報と悪報が同時にもたらされることとなった。

 

無事確保できたシリーンにはどうやら男がいたらしい。

 

王と結婚できる身でありながら、どこの馬の骨とも知れぬ男に身を許すなんて

 

人生を棒にふるなんてバカな娘だった。

 

王との婚約は解消するしかなかった。

 

なんて恥知らずな娘なの。我が家の体面を傷つけるなんて!

 

恩をあだで返すシリーンを庇う者はおらず、自業自得なあの娘は放逐された。

 

そうしてシリーンの身柄は店主の物となった。

 

厄介払いできたけれど今更私は家に戻るきはなかった。

 

美にまつわる書籍を発表した私は作家になった。

 

でも他人を偽るのは楽しくても自分を偽ることは簡単ではない。

 

だから私は再びあの娘に近づき、今や大親友だった。

 

私から全てを奪ったあの娘の傍にいて、あの娘の破滅を見届けたかった。

 

 

そうして数年がたち再び王から婚約の話が我が家にもたらされた。

 

王が望んだのは「レイラ」だった。

 

 

でも今更だった。もう私は変わってしまった。それに遺伝子の悪夢から逃れられない以上、私が彼に嫁ぐことなどできるはずがなかった。

 

父は私が行方知らずなのをいいことに、よりにもよってあの娘に私に成りすますことを依頼してしまった。

 

あの女のことを父がどう言い訳したか知らないけれど、店主が気にした様子はなかったし私の悪行も発覚しなかった。

 

私との関係を父にも伏せていた店主は金に目が眩んで依頼を受けてしまった。

 

許せなかった。

 

 

でもあの方は・・・私を知っているあの方なら・・・

 

あんな娘を望むはずはない・・そう思っていたのに

 

でもこれまでの人生で男の裏切りがいかに簡単なものか身に染みていた私は

 

たとえ私の手を取ってくれたあの方であっても信じることができなかった。

 

だから店主に依頼してしまった。

 

もし、あの方がシリーンを受け入れたならあの方をこの世から消してしまって、と

 

愛が強かった分憎しみがより強くなってしまった。

 

王の存在が研究に邪魔だと考えていた店主とははからずも利害が一致してしまった。

 

こうして私は「王暗殺」計画のクライアントになったのだった。

 

そして今に至る。