注本物のレイラ視点のエピソードとなってます(心の闇ダダ漏れなんで閲覧注意)

 

それでもあの娘を避けることで私はなんとかバランスを保ててたのに

 

あれはあの娘の誕生日だったわ。

 

うちではことさら特別なことはしないけど、あの娘の母親が父に内緒で贈った綺麗な衣装を着て踊っているあの娘を見かけた。

 

その圧倒的な美しさに皆感嘆の声をあげてた。

いたたまれなくなった私はこっそり家を出て、そして

 

あの方に会ったの

 

ベールで顔を隠した若い男だった。

ちょうど少年と青年の間くらいの年ごろだった。

 

あちらもベールをしていたけれど褐色の肌で整った顔立ちだと窺えた。

 

敷地の周囲をうろつく彼を見咎めて、様子を窺う私に彼が尋ねたの。

 

 

「お前が噂のアリ家の娘か?」

 

涼やかで落ち着いた声だった。

 

年頃になって若い男に関心をもたれたのは初めてだった。

 

だから妙に私は緊張していたけれど、彼が「噂の」と言った途端私は冷めてしまった。

 

 

噂の?なによ、それ・・・

 

彼の問いかけは私を動揺させるものだった。

応えない私に焦れたのか彼は私のベールをめくってしまった。

 

 

「ほう・・これはこれは確かに「噂」通りのようだ」

 

なんとも言い難いとでも言いたげな彼の言葉に羞恥で私は気が昂ってしまった。

 

「私をアリ家の娘と知りながらなんて無礼なの!控えなさい下郎」

 

初対面の男に屈辱を受けてしまったなんて。

 

けれど怒りに震えながら立ち去ろうとした私の背を彼の穏やかな声が追いかけてきた。

 

「お前との結婚を私は楽しみにしているよ・・」

 

 

「なによ!それどういうことなの!?」

 

振り向いた私の唇をそいつは奪った。

 

私の・・・ファーストキスだった

 

衝撃的過ぎてどんな感じだったかなんて覚えてない

 

息ができなくて苦しくて・・・眩暈がした

 

呆然とたたずむ私の手の甲に恭しく唇を押し当てて顔を上げたその男の背丈はとても高くて月光に照らされたその顏、ベール越しでも美しい男だということがわかった。

 

からかわれてるんだって思ったわ

 

こんな美丈夫が私を求めるはずはないもの

だから思わず言ってしまった

 

「人違いしてるわよ!貴方が欲しいアリ家の娘は私じゃないわ」

 

彼はなにか言おうとしたけど私は言い訳なんて聞きたくなかった

 

だから突き飛ばしてよろけた彼をその場に置き去りにして屋敷に逃げ帰った。

 

さすがに敷地の中までその男は追ってはこなかった。

 

振り向いた私の目に、その男が苦しそうにその場に跪くのが見えた。

 

そう言えば王は病弱だという噂だった。

 

特殊な皮膚疾患も患っているって

 

では・・・あれが・・・私達姉妹を娶る王なの?

 

嫌だわ・・姉妹で一人の男を共有するなんて

 

 

私は混乱していた。