真実を求めて・・の続きのライザール×シリーンのラブエピソードです
真剣な話し合いはそこで切り上げることにした。
砂漠の夜は冷える、シリーンにも私にも温もりが必要だった。
「そんな格好だ。寒くないか、もっとこちらへ寄るがいい」
今夜ライラとして私を訪ねて来たシリーンはガウンと宝石しか身に着けていなかったが私の寝台に入る時にそれらも外してしまった。
私は元々寝る時は服を身に着けない主義だ。
つまり私たちは生まれたままの姿で遭難者のように互いの温もりを分け合っていた。
そっと抱き寄せたシリーンを窺うと私の視線を素肌に感じたのか羞恥に頬を染めうつむいた。
先ほどまで妖艶な姿で私を誘惑した者と、とても同じ女だとも思えぬほどその姿は可憐だった。
一方、ライザールに促されたシリーンはそっと逞しい彼の腕に抱き寄せられながら置かれた状況に戸惑いを隠せないでいた。
長く心を覆っていた深い闇が払われたのはつい先ほどのことだった。
気づいたら目の前に生き別れたルトが立っていて変わらぬ眼差しで私を見つめていた。
年を重ねてはいたが、そのまっすぐな強い眼差しと深い琥珀色の瞳は間違いなく彼のものだった。
――ああ、ルトなんだわ
ライラが解放してくれた私の記憶は瞬く間に現実へと私を誘った。
私は大切な記憶をやっと取り戻すことができた。
かつて愛した人、ルトも私を受け入れてくれた。
記憶のないまま、私はすでに一度彼を求めていた。
彼もまた私がシリーンだと知らないまま私を抱いた。
本能的に互いを認識していたのかもしれない。
私達は互いに過去を封印して、身分を偽って生きてきた。
本当に似た者同士だったのだ。
けれど数奇な縁でこうして再会して、変わらず私に愛を注いでくれる彼の腕の中にいるのかと思うとあまりにも幸せで、
私なんかが幸せになっていいのか躊躇ってしまった。
きっとこれまで幾度も残酷な運命によって阻まれてしまったからだと思う。
だけどこの機会を逃せば私はもう彼とやり直すことはできないかもしれないという予感があった。
王の彼と密偵の私、これだけの差が変わらず私達の間には横たわっていた。
私は偽りの婚約者のままだ。店主様のこともある。解決しなければならない問題が山積みだった。
それだけ私を取り巻く環境は複雑でただ一筋の光を見失わないようにするのが精いっぱいだったから。