「光を求めて」の続きのエピソードです

 

ライザが去っていき、再び室内には私とライラだけになった。

 

拘束を解いてやりガウンを着せた後、ライラの前で跪いた私は

「彼女」の心に訴えかけるように、その黄金色に煌めく瞳を見つめながら訴えた。

 

「私が悪かった。お前の全てを私が受け止めるからっ・・・だから私の元に戻ってくれ!シリーン」

 

名を呼んだ瞬間ライラの中で何かが目覚める気配がした。

 

私の決意を確かめるようにライラが問う。

 

「それが貴方の答え?」

 

昂る感情のまま頷き返した私にライラがはっとするような柔らかな笑みを浮かべて目を閉じた。

 

「わかった・・・扉を解放するわ・・これからは貴方がシリーンを受け止めてあげて」

 

そして次に目を開いた時そこには間違いなく私のシリーンがいたのである。

 

「・・・・・・ルト・・・なの?」

 

涙ぐむその顔は確かにあの頃の面影を秘めていた。

 

「ああ・・そうだ。私だ・・・シリーン」

 

「ッ・・・ルト!」

 

涙をこらえながら抱きつく彼女を私は抱きしめながら、その柔らかな温もりを実感する。

 

傷つきやすい心を守るためにライラというベールを被っていた彼女が全てを脱ぎ捨ててシリーンとして私の元に戻ってきてくれた。

 

離れていた間の出来事が走馬灯のようにめぐりライラが守ってきた彼女の記憶を補てんしていった。

 

ライラ・ヌールへの憧れも彼女の母の死も

 

私との出会いと離別も・・・カルゥーの死も

 

闇に捕らわれて「密偵」になってしまったことも

 

彼女にとっては一瞬の出来事だった。

 

「ごめんなさいっ・・私、貴方の大切なカルゥーを守れなかった」

 

彼女の心を縛っていた悪夢も・・・そして私の罪も全て受け止める

 

「カルゥーのことはお前のせいじゃない。私こそすまない、お前を守ることができなかった。・・・私のせいでお前の母は・・・私は自分が許せない。お前にどう償えばいいのか・・」

 

私達は互いに心の内をさらけ出した。

 

「違うの!ルトのせいじゃない!母を死なせたのは「レイラ」さまよっ」

 

 

「レイラ」とはこれまでシリーンが成り済ましていたアリ家の娘だった。

 

「どういうことなんだ?お前の母は私のせいで濡れ衣を着せられ処刑されたのではなかったというのか?」

 

否定するように苦しげに首を振ったシリーンが続ける。

 

「店主様の暗示のせいで私は忘れてしまっていたけれどライラが覚えていてくれたの。レイラ様が本家の奥様の宝石を盗みその発覚を恐れて私の母の部屋に隠したって」

 

「なんだと?なんということだ」

 

シリーンの話によると、ライラ・ヌール出現のどさくさにまぎれてレイラが以前から欲しかった母親の宝石を盗んだらしい。

 

それは元々ターヘルがシリーンの母のために用意した宝石だったが、嫉妬した夫人が強引に強請り夫に贈らせたものだったそうだ。

 

戦利品の宝石が盗まれて怒った夫人は一度は宝石紛失を騒ぎ立てたものの、すぐに娘の仕業と見抜きライラ・ヌールのせいにして場を収めた。

 

しかし数人の目撃者がいたことで噂に尾ひれがつき周囲に露見するのは時間の問題となった。

 

アリ家は王との婚約を控えており焦ったレイラは父の寵愛を奪ったシリーンの母に罪を着せることを思いついたそうだ。

 

「この女がお母様の宝石を盗ったのを見たわ」

 

自ら目撃者を装い彼女を貶めることに躊躇もしなかったらしい。

 

シリーンの母は当時別邸にいたし、もちろん周囲もバカじゃない。

 

寵愛を得ながらも変わらず慎ましいシリーンの母と手癖の悪い虚言壁のある本妻の娘の言い分のどちらが疑わしいか考えなくてもわかるだろうが、体面をなによりも重んじる彼らはシリーンの母に罪をかぶせることで事件を終わらせたのだ。

 

私の母と同じだった。身分差は決定的だったのだ。

 

こんなことは間違っている。

 

シリーンの母は一切の弁解もせずに将来のあるレイラを案じ、全てを飲み込み刑に服したのだという。