レイラの甘い誘惑&訝しい誘惑から続くエピソードです

 

正直に全てをライザールに打ち明けた私の告白に彼は思慮深く頷いたがけっして私を責めなかった。

 

「真実を告白する勇気がある君は称賛に値するよ。大丈夫、私は君を恨んでいないから。もともと気の進まない結婚だったからね」

 

「そうなのか?」

 

ざっくばらんな王に好感を持ちつつ尋ねる私に彼は言った。

 

「君が正直に言ってくれたから私も正直に打ち明けるけど・・・当時好きな女性がいたんだ。彼女、身分が低いことを気にしてけっして私の求愛を受け入れてはくれなかったけど。そんな時に結婚話が出てしまって彼女は去ってしまった」

 

「・・・そうだったのか」

 

自由恋愛を試みたことは驚きだったが、その想いはルトにも理解できた。

 

「それに・・もともと私の結婚相手は二人いたんだよ?知っていたかい?」

 

それは初耳だった。もちろん一夫多妻が許された世界である。

そういうこともあるかもしれない。

 

「俺は一人で充分だが・・相手は?」

 

「ははは、まったくそのとおりだね。私もそう思う。姉妹を侍らすなど悪趣味極まりない。だから嫁ぐのは一人だけにしてもらった」

 

そう笑いながらライザは教えてくれた。

 

一人はシリーンだった。だがもう一人は誰なのか気になり尋ねたルトにライザはあっさりと答えてくれる。思ったより饒舌のわけはもしかすると誰かと話したかったのかもしれない。

 

「私が聞いた話だと彼女の異母姉妹だということだった。たしか・・名前はレイラとか。」

 

それはアリ家の娘だった。権力にあやかろうとターヘルは本妻の娘のレイラを王に嫁がせようとしたようだ。

 

だがレイラもまた生まれつき身体が弱く、また醜かったため王の不興をかっては一大事とばかりに婚姻を取りやめにして、弟の愛人の子供だったシリーンを養女に迎えその美貌で寵愛を独占すべく王に嫁がせようとしたとかなんとかいう話だった

 

そのような恥知らずな毒虫が権力という甘い蜜に群がるそれが宮廷だった。

 

それからも話はつきず、私はライザールを見込んで様々な話を腹を割って話し合った。

 

彼に国民の現状を訴え問答した私に「では君がやればいい」とライザールが言った時は驚いたが、彼は本気だった。

 

「俺の母は冤罪だったが処刑された。だがこの国の法は母を盗人として罰したのだ。そんな俺に王をやれと貴方はいうのか?」

 

母は名誉を挽回することもできず、処刑されてしまった。

 

さぞかし無念だったろう母のことを思うと俺はつい感情的になってしまう。

 

そんな俺に対しライザールはさらに驚きの真実を打ち明けたのだ。

 

私の母の死を彼は「残念だった」と悼んだあと、静かに語りだした。

 

「私の父ライオールは生涯に二人の女性を愛した。一人は私の母、そしてもう一人は名もなき花だと父は言っていたけれどそれが君の母上だった」

 

!!

 

元々貴族の家庭教師をしていたにすぎない母だったが、若い頃偶然先王の目に留まり一夜の寵を受けたのだと言う。

 

それはまさに秘密の恋だった。

 

「私は君も君の母上も父のことも責める気はない。私の母とは政略結婚だったし、互いに尊敬しあっていたからね。

 

父は君の母上を愛していた。だから処刑されたと知った時はひどく悲しんでいたよ。君の行方も分からずじまいだったからね、だから私にだけそのことを打ち明けてくれた。

 

もしもう一人の息子ルトが生きて私を訪ねてきたら力になって欲しいとね。そう・・君は先王の血を引く王子でありこの国を継ぐ資格を持つものだ。

 

幸い君には遺伝的な疾患は現れなかったようだ。

 

だからこそ王家の宿命に捕らわれずに自由に生きて欲しかったから市井で生きることを望んだようだが、君はこうして私に会いに来てくれた。

 

もし君が望むなら王座を譲りたい。運命の導きにはしたがってみてはどうかな?」

 

やってやれないことはないだろうと若気の至りで思ってしまった。

だが王になり初めてライザの苦悩がわかった。

 

絶対的な権力を持つものの王はとても孤独だった。

 

味方などいないも同然、己の欲に忠実なさまざまな強欲な者たちの集うるつぼだったのである。

 

異母弟であるライザは私の相談相手になり、時に私は彼の指南を仰ぎ王の役割を果たしてきた。

 

母が教師だったせいか最低限の教養もあったし、今思えば帝王学も熱心に学ばされたのはこうなることを見越していたのかもしれないが、なによりも私はタフでやる気もあったのですぐに順応した。

 

こうして私はライザールとなり、虎視眈々と権力にあやかろうとする者達と対面した時は緊張したものだが、

 

幸いもとから私とライザールは年齢も近く体格も風貌も似ており誰も入れ替わりに気づくものはなかった。

 

人目を恐れたライザールがベールを常に身に着けていたことも功を奏したが、

 

もともとそれだけ皆が私服を肥やすことに専念するあまり虚弱な王に無関心だったことが大きい。

 

王座におさまった私は国を再建すべく精力的に改革を断行したおかげで成果は出たが反発も当然あった。

 

そして大臣たちとの対立を経て今に至る。