そんな私の事情も知らずに身をゆだねた彼女を初めて抱いた夜、私はもう一人の彼女、レイラの中に眠っていたライラに出会ったのだ。

 

ひと目で同類だとわかった。

 

まるで鏡を覗きこんでいるようだった。

奔放で貪欲で冷徹な彼女に同族嫌悪を覚えた。だが同時にその肉欲を煽る魔性の魅力に抗うことはできなかった。

 

レイラの抑圧された魂が彼女を作り出した。

つまりあれは彼女が秘めた欲望の化身だということだった。

 

あのような淫らな女が彼女の一面なのだと思えば到底愛する対象にはならぬはずだったが、レイラと接するうちそれが私の考え違いだということが徐々にわかってきた。

 

どうやら彼女は心に誰か秘めた相手がいるらしい。

 

私と同じだった。

 

私は男だからこれまでもそれなりに欲望を享受できたが、彼女はよほどその男が恋しいと見えて頑なに貞操を守っているように見えた。

 

処女ではないのに、である。

 

つまりそれは・・初めてを捧げた相手に対しての義理、もしくは意地なのかもしれなかった。

 

そう思えば親が決めた私との結婚など彼女にとっては青天の霹靂同然だったのだろう。

 

互いに愛がなくとも、妻になったならば役割を粛々と果たさなければならない。

 

そんなことに彼女のような初心な娘は耐えられなかったのかもしれない。

 

好きでもない男に抱かれなければならない彼女の気持ちを想えば確かに哀れだった。

 

そんな彼女からしたら傷つくことなく男を翻弄できるライラは都合のよい存在だった。

 

そして私にとっても・・・

 

会った瞬間ライラは私の欲望も瞬時に見極めた。

 

心を明け渡すこともできぬまま肉欲だけを求めることなどレイラは許さないだろうことは私にもわかった。

 

だから心の触れ合いを持たずともよいライラとの割り切った関係が心地よかった。

 

常に心を要求されたら準備のできていなかった私は消耗してしまいきっと上手くいかなかっただろう。

 

だから関係は維持しつつ互いの弱みを熟知したライラが間に入っている状況は私に考える猶予を与えることになった。

 

だがそれも長く続かなかった。

 

私の心が餓えていたからだ。

欲望だけでは心を満たすことなどできぬ。

 

熱を帯びながらどこか諦めた、すがるようなレイラの眼差しに私に対する愛を感じた時、私は彼女を愛し始めていることに気づき衝撃を受けた。

 

心を求めるなら同時に与えなくてはならなかった。

 

なぜか私は多くを望まない女の涙に弱いようだ。

 

シリーンも彼女の母親も控えめな幸薄い女達だった。

なんとか力になりたかった。

 

闇から救いだし彼女たちに相応しい光り輝く場所へと導きたかった。

 

そして「レイラ」もそんな女だった。

 

美しいのに抑圧された、なにか得体のしれない宿命を背負った彼女に私が惹かれたのは運命だったのかもしれない。

 

そう、今なら私も認めることができる。

 

レイラが私に求めるもの

 

それは私が真っ先にありえないと排除していたもの

 

私の心だということを

 

それが思いのほか嬉しかった

 

私はまた恋をしてもいいのだろうか?

 

自問自答する日々に飽いた私は意を決してレイラに贈り物をした。

 

もし今夜彼女が私に会いに来てくれたら・・

 

たとえ他に心に想う相手がいたとしても私を必要としてくれるなら

それでも構わなかった。

 

私達はきっと誰よりも分かり合えるはずだから・・

 

だから私はただ切なる想いで彼女の訪れを待っているのだ。