遅くに部屋を訪ねた私をライザール様は嬉しそうに出迎えてくれた。
「私に会いにきてくれたのだな。レイラ・・・私もお前に会いたかった」
彼の心からの言葉に喜びが募る。
やはり勇気を出して会いに来てよかったみたい
昼間に彼が会いに来てくれた時、私は彼を信じてみようと思ったのだから。
好きだからこそ相手の気持ちがわからなくて不安になることもあるけれど、私たちはこうして何度でも歩み寄れる。
彼が求めてくれて嬉しかったから私も遠慮なんかしない
そう覚悟を決めて彼を切なく見つめる私の唇に彼がキスをくれた。
――あ・・・・
腰を抱き寄せられ深まる濃厚なキスに吐息が乱れてしまう
もうそれだけで胸がいっぱいだったが本番はこれからだった。
「さあ・・・レイラ私に見せて見ろ・・・お前の全てを」
促された私は彼の眼差しの熱さに頬を火照らせながらガウンを脱ぎ捨てた。
!
異国のランジェリーと彼から贈られた宝石だけを身に着けただけの私の姿は予想外だったのか、彼の顔は一瞬朱に染まりかすかな動揺が走った。
本来なら挑発するような妖艶な誘惑こそ似合うコスチュームだったのだが気恥ずかしさが勝り、つい気後れしてしまった。
「ほう・・・これはフレイル帝国産・・・だな?」
だが彼はすぐに眉をあげて、興味深そうにじっくりと私を観察した。
そういえばライザール様は異文化に対して興味があると以前おっしゃっていたかも・・・
でも今は私を見て欲しかったから、
注意をひくべく軽く咳払いをしてみた。
「ああ・・・すまない。つい見惚れてしまったようだ。とてもよく似合っている私が贈った宝石も・・・その異国の下着姿も感じ入ったぞ」
それまで楽しげだったライザール様の顔が真剣さをはらんだ私を誘惑するような艶めいた面持ちになる。
「レイラ・・・ずっとお前のことが欲しかった。お前もそう思ってくれたから私に会いにきてくれたのだろう?」
ライザール様の問いかけに私は素直に頷き返した。
「はい。・・・でも私・・・身体だけでは嫌です。貴方の心も私にくださいますか?」
!
案の定ライザール様がハッとしたように瞠目する。
そんなことを言ったらライザール様を困らせるだけかもしれない。それでも溢れた想いは満ち溢れるように言葉をつむぐ。
彼に他に想う方がいることには気づいていた。
時折遠くを見つめるように追憶にひたる瞬間があったから、
貴方の苦悩を浮かべた眼差しに私ではない誰かを追い求めて重ねているのだと気づいてしまったから
それが苦しくて苦しくて私でなくてもいいならライラでもいいのだと拗ねてしまったこともあった
だって私が欲しいのは貴方の心なのだから。
私を見ていない貴方に抱かれるのが苦しかったから
心をもらわずとも苦しまないライラを身代わりに差し出してしまった
「貴方に忘れられない方がいることはわかっています・・・私も、私も同じだから・・もう決して再会することができない方ですが私だってその方のことを忘れられなかった・・でも今私が欲しいのは貴方だけです。だから・・っ」
その先を続けることはできなかった。
急に情熱に駆られたライザール様に抱き上げられたと思ったら寝台へとさらわれてしまったから。
「そうだな・・・私も同気持ちじだ。我々は互いを求めながら傷つくことを恐れている。だが今お前を抱きたいのは私の心がお前を欲するからだ。お前が欲するものなら何でも何度でも与えてやる。お前が望むのならこの命だって捧げてもいい。だから私にお前を愛させてほしい・・愛しているレイラ」
!
それは私の官能と愛を高める魔法の言葉だった。
私が欲していた言葉そのものだった。
私を抱きしめる彼の逞しい腕の中に戻れたことが嬉しくてそのあまりの居心地良さに彼を誘惑しにきたことを忘れてしまう。
むしろ彼に魅了されて誘惑されたのは私の方だった。
年上な分私より人生経験豊富なのはしかたないのだろう。
様々な経験が彼を磨き上げたのだと思えば、そんな魅力的な彼の最後の女になれるのならば本望だった。
慣れた手つきで下着を外されて、じっくりと愛された。
「あ・・・はあ・・・」
巧みな指先や官能を引き出していく唇の熱さに酔いしれてしまう。
彼が与えるあまりにも甘美な愛撫に気が遠くなりそうだった。
我慢できないほどの熱に浮かされて心も体もほどけて彼と一つになれることが嬉しくてとても幸せで・・・夢中で求め合った。
夢心地で寛ぐ私に彼が言った。
「レイラ、痕をつけていいか?」
私の首筋に顔をうずめたまま尋ねる彼の吐息がくすぐったくて思わず身をよじりながら、考えるふりをする。
「・・・見えないところなら」
さすがに人目に触れるのは恥ずしかしかった。
もしかしたらライザール様はそうしたかったのかもしれないけれど
「わかった」
許可したとたんライザールさまに強く吸われて身体がぴくんと跳ねた。
首筋は諦めてくれたが脇や体の内側の弱いところを次々と吸われてしまう。
最後は私の胸元に頬を寄せて寝てしまった。よほど疲れていたのだろう。起こす気にはなれなかった。
「もうライザールさまったら」
子供みたいな姿に思わずため息がもれてしまう。
でもその安心しきったような寝顔を見ていたらなんだかとても温かなものが心を満たすのがわかった。もしかするとこれが母性というものかもしれなかった。
なんともいえない充実感が身体を満たしていた。
しばらくぶりだったとは思えないくらい私は彼をごく自然に受け入れていた。
彼も情熱的で貪欲だったけど最後は穏やかで大らかな少年のような姿になんだか無性に懐かしさを感じてしまった。
それは長らく忘れていたデジャブだった。
やはり・・・この方が私の・・・大切な方
だけど押し寄せる睡魔でそれ以上考えることはできないまま私は穏やかな眠りの世界へと誘われたのだった。