考慮して言葉は選びましたがアメブロさんの規約もあるので微妙なところです。ご了承ください(-_-;)
アリ家から追放された私を待っていたのは男たちの欲望の玩具になる道だけだった。
光り輝くシャナーサ王国のそれはまぎれもない闇の空間だった。
自分ではわからなかったが、なぜか小さいころから様々な大人たちが甘い言葉を囁き私に触れようとした。
それが嫌でたまらなくて私は常にベールで顔を隠して母の後ろに隠れて大人の顔色を窺う臆病な子供だった。
もっと昔はお転婆だったらしいけれど。
だが年頃になった時、突然本家に呼び出されて王に嫁ぐように命じられた。
私だって年頃の娘だ。男の人は怖かったけれど恋だってしてみたかった。
けれど誰も私の気持ちなど汲むものはおらず、婚約の準備は粛々と進んでいた。
母と引き離された私は一時的な住処として離れをあてがわれた。
時折本家の娘レイラ・アリを遠目に見かけることはあったが、侍女曰く彼女は美醜に対するこだわりが強くそれを気にして滅多に人前に姿を現さないらしい。
まさに深窓の令嬢だった。一度だけ廊下ですれ違ったことがあったが、互いに言葉を交わすこともなく、ただ彼女がまとったムスクの残り香だけが漂っていた。
王に差し出すための礼儀作法を仕込むためだけの仮住まい。
その場所は贅を尽くした牢獄と大差なかった。私自身虜囚だった。
冷たく儀礼的で誰も本音を言わず、噂話に興じては妬み嘲笑する淀んだ場所だった。
母とは今生の別れになってしまった。あれからすぐに母は亡くなったのだと聞いた。それで少しだけ婚期が延びたとご当主がぼやいていたのを聞いてしまった。
嫌な場所。ここは嫌い。
ライラ・ヌールに連れ去って欲しかった。
ここから連れ出して私を自由にしてほしかった。
一度だけ彼の姿を見かけたことがあった。
だってアリ家は彼の憎む大金持ちだったから。
黒い獣を従え、満月を背に高い塀の上に佇む彼の姿はまさにヒーローそのものだった。
目が合った気がした。
それがたぶん私の初恋だった。
だが彼は行ってしまった。
私のように恵まれた貴族の娘を彼が顧みることはない。
貧困にあえぐ民しか彼の目には映らない。
それがなんだか悲しかった。
だから私は身一つで家を飛び出した。
彼にもう一度会いたくて、あてもないままを探して・・・探して・・・
砂漠までたどり着いた時、砂嵐にあってしまった。
もうこれで終わりなのだと初めて恐怖を感じて孤独が身に染みた。
せめて一目彼に会いたかった
「おい・・・生きているか?」
真剣さをはらんだ声に意識を取り戻した私はついに彼を見つけたのだ。
「ライラ・・・ヌール?」
そう言うのが精いっぱいだった。
脱水と疲労から私は意識を消失した。
私を拾ってくれた青年は「ルト」だと名乗った。
逞しい健康そうな褐色の肌に艶やかな黒髪を一房金に染めた巻髪の持ち主だった。
一見強面だったけど、話してみたらとても気さくで優しくて頼もしくて爽やかな笑顔がとても素敵だった。
少しだけ年上のルトに私はすぐに夢中になった。
なぜか彼は隠れるように郊外の洞窟を住処にしていた。
彼にはとても素敵な同居人がいた。
黒豹に似てるけどフサフサの毛が頭部に生えていてまるで人間みたいな、マウトグイータの「カルゥー」だった。
彼も私に懐いてくれて、私たちが家族同然の存在になるのに時間はさほどかからなかった。
黒い獣を連れた琥珀色の瞳のルト・・・やはり彼はライラ・ヌールだった。
「ねえ貴方ライラ・ヌールでしょ?一度だけ会ったことあるのよ」
尋ねた私に彼が正体を打ち明けてくれた時はとても嬉しくて、お前も身内だと言ってくれたことが誇らしかった。
穏やかに流れる時間に癒されていくのがわかった。気づいたら臆病だった自分がウソみたいに活発さを取り戻していた。