バッドエンド復活愛
かつて私はあまりにも未熟で私自身も傷ついたが彼のこともたくさん傷つけてしまった。
それでも彼の私への愛は変わらなかった。
もし彼が色欲に惑い国政を疎かにするような愚かな男なら私も求婚を受け入れなかっただろう。
だが彼は賢君だった。
だから私も傾城の悪女にならずに済んでよかったと心底思う。
ライザール、貴方の強くて気高い眼差しを信じてよかった。
男性の暗部ばかり見て倦厭していた私の偏見を正してくれたのも彼だった。
確かに欲望に流されたこともあったがそれは私もまた同じだった。
彼だけを責めることはできなかった。
「長かったな・・・やっとここまでこぎつけた」
感慨深げなライザールを私は見つめた。
独断的だった彼も臣下たちの賛同を得られぬうちは結婚に踏み切れなかった。
私はというと養護施設を設立した王から運営を任されて日々忙しくしていた。
たくさんの子供達の世話をするうち私の中で自然と母性が育ったのだと思う。
そんな私を見守るライザールの瞳の中に父性を感じるようになって、いつの日かライザールとの子が欲しいと真剣に望むようになっていた。
そして今日、ついに私たちは結婚する・・
私とライザールが出会ってすでに6年の歳月が流れていた
一度は別れた私たちの道はまた重なって今日と言う日を迎えることができた
反発の声はあったが多くの者が私の更生を受け入れてくれた。
詰め寄る臣下たちに王が宣言した時は驚いた。
「私は彼女以外と結婚する気はない」
国民の圧倒的支持のある王に否と言えるものはなかった。
もちろん私はすでに婚約者ですらなく、王を惑わした出自不明の女でしかなかったが、
根負けした臣下は再び折衷案を出した。
私がいずれかの貴族の養女になるというものだった。
あの婚約者騒ぎの時に一悶着あったものの、王の温情に感謝したアリ家の養女となった。
ただしあの時とは違い私は「シリーン」としてアリ家の娘になったのである。
娘の代わりに王に身を差し出した私に対しターヘル・アリも思うところがあったようだ。
今私の心は穏やかだ。一度は裏切ってしまった私を彼が受け入れてくれて私たちはやり直すことができた。
恩人だと信じていた店主と親友に裏切られて闇に置き去られた私を見捨てずに手を差し伸べてくれたライザールには感謝してもしたりない。
おかげで立ち直るきっかけを得ることができた。
それからは彼に相応しい存在になるために私も努力してきた。
カルゥーを失ってから孤立無援だった彼の孤独を少しでも癒してあげたかった。
だからこそこの言葉を心から誓える
「愛していますライザール・・・私はこれからも貴方の良き伴侶としてともに人生を歩みます」
私の宣誓の言葉に感銘を受けた面持ちでライザールは頷いた。
「私も愛しているシリーン・・・お前を妻に迎えることができてとても幸せだ。私の生涯の伴侶はお前だけだ」
そう言ってふわりと笑った彼の笑顔が私の胸を打つ。
感極まった私たちは誓うように口づけを交わしたのだった。