「・・今夜いい?」

 

ワンコールででた俺の耳朶をくすぐる貴方の声・・・

 

仕事専用の電話にかかるあの方からの連絡はいつも簡潔なものだ。

 

それに対し、俺は「ただ是」とだけ応える。

 

俺の中には断るなんて選択肢はもとよりない。

 

仕事がひと段落したのだろうか・・・

 

どこか機嫌よさげでリラックスしたあの方の声を聞くだけで俺の胸は高鳴る。

 

今夜が待ち遠しかった。

 

スティーブン・A・スターフェーズにはライブラの幹部と別の顔があった。

 

とはいっても元来社交的なあの方のそれすら一面に過ぎなかったが、彼は俺のただ一人のボスだった。

 

ライブラは世界の均衡を守ることを信条に活動している非合法組織であり、トップのクラウスは組織を率いるだけのカリスマ性を備えていたが、光が強ければ影もまた濃くなるのが世の常。

 

世界のどこかで暗躍する互いに顔を合わせた事すらない末端の構成員たちを束ねるのは容易ではなかった。

 

組織が肥大化すれば目が行き届かず金や欲望に目が眩み道を外れる落伍者も出てしまう。

 

自由人が集うライブラであってもルールはある。

 

逸脱した裏切り者を割り出し密かに粛清する役割を担うのがあの方だった。

 

汚れ仕事を処理する必要にかられたあの方が私財を投じ創設した私設部隊に俺は所属していた。

 

内偵はもちろん現場にボスと同伴し、使役する人外の闇の傀儡を繰り敵を殲滅あるいは制圧、確保するのが俺に課せられた仕事だった。

 

普段その心の内をけして見せまいと笑顔の仮面をかぶるあの方が、その仮面を取り束の間の安らぎを得れる場所でありたい。

 

 

「ああ・・・・っ」

 

うつぶせになった俺を後ろから抱く貴方の重みと体温が愛おしい

シンクロする鼓動と首筋に顔を埋め貪るように口づける貴方の吐息の熱さが俺の熱に拍車をかける。

 

たとえこのひと時であっても貴方が俺を欲してくれるのだと思えば幸せだった。

 

もちろんベッドでの男の態度を真に受けるほど初心じゃない。

 

それでも澱を浄化する手段を探していた貴方が選んだのが俺であったことが嬉しかった。

 

慎重で背信に敏感な方だから・・・

 

だから俺は己の内に生じた貴方への想いを秘めたりはしない。

 

貴方の与える愛撫に酔いしれ、全てを受け入れる。

 

そんな俺にご褒美のように貴方は口づけをくれた。

血界戦線 腐小説 ステファン

「素敵だったよ・・・黄」

 

満足げな笑みを浮かべて抱きしめる貴方に見惚れてしまう。

 

満足していただけただろうか・・・?

 

それならばいい・・・

 

俺を抱き寄せたまま眠りにつく貴方の顔は穏やかで微睡ながら、

 

俺は瞼が開けなくなるまでそんな貴方を見ていた。

 

 

 

 

おわり黄色い花