『あ、それ?ほら一昨日金魚草コンテスト手伝った時にマキちゃんが俺にくれたんだ~』

マキとは地獄アイドルピーチ・マキのことだった。奇抜なタイトルの歌ばかり発表していたが、子供向け番組のチャイニーズエンジェルのヒロイン、エンジェルウグイスを舞台で演じた途端新たなファン層を獲得したのを皮切りに同じ事務所の野干(狐の妖怪)の少女ミキとコンビを組むやいなや老若男女問わず人気の売れっ子芸能人となったことは記憶に新しかった。

マキの快進撃はそれだけにとどまらなかった。中でも鬼灯に招かれて金魚草コンテストにゲスト出演した折、コンテストの審査員のお眼鏡に適ったマキが金魚草大使に抜擢された瞬間の出来事は印象深いものだった。

回想


鬼灯の冷徹 金魚草大使 ピーチ・マキ

マキは小柄な娘だったが、甘い香りをまき散らすほっそりとした肢体とはアンバランスな豊満な胸の持ち主だった。顎のあたりで軽やかに広がった黒々と艶やかなショートボブに縁取られた血色の好い童顔、バッサバサのまつ毛に縁取られた愛くるしい黒目がちの大きな瞳に、人生を謳歌する娘に不釣り合いなコケティッシュな涙黒子が印象的な娘だった。

金魚草をモティーフにした軽やかな朱の薄衣を幾重にも重ねた着物を纏ったマキは確かに可愛かったが、お香のような洗練された年上の淑女を好む唐瓜の興味はすぐに失せたものの、サイン色紙を手に無邪気に浮かれる茄子の興奮は明らかだった。目線を合わせようと少し前屈みになったマキを前に茄子はあくまでも己の欲望に忠実だった。

――乳デカい!!

茄子がそう思ってるのは明らかだった。思ったことを何でもすぐ口にしてしまううかつなところのある茄子がマキに無礼なことをしでかさないかと唐瓜は内心冷や冷やしながら見ていることしかできなかった。

しかし唐瓜の心配は杞憂に終わったようでマキは始終上機嫌だった。いやむしろ散々な目に遭いヤケクソだったのかもしれない。

『今日はホントに来てくれてありがとう、あ・・これ良かったら食べて?(頼むから貰ってくれっ)』

眼を見開きビクビクとざわめく金魚草に埋もれ限界寸前だったマキの思惑はともかく、半ば強引に金魚パイを押し付けられた茄子の顔は緩みっぱなしだった。

『ありがとっマキちゃん!俺大事にする!』

思いがけないアイドルからのプレゼントに茄子が舞い上がるのも無理はなかった。

『いや、食べてなんぼでしょ汗・・!よ、喜んでくれてよかったあドキドキ
これからもマキのこと応援してねラブラブ


鬼灯の冷徹  感激茄子ちゃん


キラキラうん!わかった!』

瞳をキラキラさせ嬉しそうな茄子を前に冷静に突っ込みを入れたマキだったが唐瓜の視線を感じたのか態度を軟化させるとアイドルスマイルをひきつった顔面に張り付けたのだった。




2015年8月11日公開