(はあ・・俺も茄子のこと言えないか)

甘酸っぱい思い出に浸っていると、中腰のまま下から覗き込む上目遣いの茄子と目があった。

『あれえ?どうしたのさ唐瓜ィ・・顔赤いよぉ?』

!!

『ブホッ!!!な、なっ・・・あせる

時々妙に鋭い茄子の突っ込みに思わず動揺を隠せなかった唐瓜の手からツルッと抜け出たゆで卵は弾む心のようにポンポンと樹の幹を転がり伝って地面へと落ちた瞬間だった。

!!

うごうごうごっ

猫好好シェアハウスの不気味な笑った口の中に位置する穴から大量の針口虫が溢れ出て来たかと思うと、見る間にゆで卵へと群がったのである。

ガーン・・・・キモッ』


鬼灯の冷徹 茄子ちゃんと不喜処のワンコ シロ


『そういえば・・・俺、前に不喜処のワンコに針口虫勧められたことあったなあ』

汗

茄子の呟きに唐瓜の脳裏に能天気な顔をした桃太郎の元お供の白い犬が浮かんだ。天国在住だったシロは余程鬼が珍しいらしく鬼の生態を手当たり次第に調べているようだった。特に茄子は朧車と小鬼のハーフだからかよりシロの飽くなき好奇心を刺激したのかもしれない。

『ま、キビ団子※1で喜ぶ犬も珍しいと思うけど。はあ~にしてもまだ半分しか食ってなかったのにもったいないなあ』

地面に落ちた物はすべて土に返る宿命とはいえ、空腹を満たせなかったのは残念でならなかった。

すると何事もなかったかのように茄子が持っていた袋からゆで卵をもう一つ取り出したかと思うと唐瓜に手渡しながら言った。

『まだあるからさ俺と半分こしよう?唐瓜~だってさ・・俺達親友だもんなグッド!キラキラ

『そういや昔あったな・・・そんな感じのアニメ』※2

人懐っこい顔をした白い犬と気の置けない目の前の親友はどこか似てる気がした。

気を取り直し卵を食べていると、どこからともなく殺気が放たれるのを感じた。

えっなんかすげえ視線感じんだけど・・まさか!?』

するといち早く気配を感じたのかゆで卵を一瞬で消し去った針口虫の一行は一目散に巣穴へと退散した。

ガーンまさか!これって・・』

頭上を覆う威嚇するように翼を広げた凶鳥の陰に覆われた唐瓜は生きた心地がしなかった。

いくら雉のルリオと交流があるとはいえほとんどの鳥獄卒は新卒の二人にとっては職場の同僚と呼べるほどの関係もなかったからである。しかも親鳥の宝物を自分たちが食べているのだから尚更だった。

『ひっ・・・あ、あの~その~・・・ど、どうすんだよ茄子!?』

混乱の極みに達した唐瓜を尻目に茄子はやけに落ち着いた声できっぱりと言った。

『大丈夫だって唐瓜~だってこの卵無精卵なんじゃないの?』

!?

『へっ?そうなの?』

茄子の言葉に納得しかけた矢先だった。いよいよ殺気立った脳吸い鳥がさらに翼を大きく広げたかと思うと良く通る声で言い放ったのだ。

むかっそれはオレの子だ!!小僧!!覚悟しろっ!!』

唐瓜&茄子
『!!!ひえええええ~お許しを~~!!』

先程の勢いはどこへやらとばかりにガタガタと蒼白で震えながら抱き合う小鬼の必死の哀願は届かなかった。

『黙れ!!喰らえ渾身のバードクラ~ッシュッ!!』

唐瓜&茄子
『ぎゃああああああああっ』

その後の参事は語るまでもなかった。




2015年8月21日公開

※1犬猿雉・・・キビ団子じゃなくてキビナゴ(魚)ならいけそうな気がする・・

※2名犬ジョリー