競技は新卒を対象に龍旋処の中に設けられた特設会場にて行われる運びとなった。
竜旋処は切り立った崖に囲まれた起伏にとんだ岩肌から吹き出す高温のガスが亡者を苛み、ティラノサウルスを始めとする大小さまざまな恐竜獄卒が支配する刑場だった。
『あれ?儂ここ来たことあったけ?・・でもまあ沙汰を下すことはあっても刑場に来る用事なんかは鬼灯君にお願いしてるからさあ。よく会場押さえられたよねえ大変だったでしょ鬼灯君』
新卒専用の試練のため本来ならいるはずの小回りの利くラプトルなどは難易度が上がるため試練の間は急きょ別の刑場へ出向いてもらっていたのだ。
高台に設置された審査に加わる関係者専用の特設サイトに陣取り、珍しそうに周囲を伺う閻魔大王の瞳はキラキラと輝いていた。恐竜もさることながらデスクワークから解放されたことがより上司を機嫌よくさせているのだろうと鬼灯は冷静に分析しながら拡声器へと手を伸ばした。
『新卒の皆さん今回のテーマはずばりチームワークです。仕事の効率を考えればチームワークは重要なもの。だから前回と異なり今回はチームに分けて参加してもらいました。互いを補いながら知力体力を駆使して頑張ってください。ちなみに優勝したチームには地獄名物の卵セットを差し上げます。』
『いいなあ美味しそうだ』
心なしか前のめりの猿の柿助を軽く睨みながら雉のルリオが言った。
『俺としては微妙だ。ミル×ーム5日分の方が嬉しい』
『それ俺にはわかんないけど、桃太郎の話聞いてから一回見てみたかったんだよねえ。誰か知り合いいないかなあ・・・あ!ほらあそこにいるの唐瓜さんと茄子さんじゃない?』
一般公開はされなかったものの、特別に鬼灯の許可をもらった二匹と一羽も観覧席で大会を見学させてもらっていた。普段はめったに会えない恐竜獄卒の迫力に圧倒されながら見守っていたシロだったが、見覚えのある二人の姿をいち早く発見するとつい前のめりになってしまった。
『シロさん・・落ちても知りませんよ。ここ基本は関係者以外は立ち入り禁止なんですから』

『はい!鬼灯様!』
目ざとい鬼灯の忠告に脳裏に苦い思い出の数々が過ったのか、サッと青ざめたシロが身を正した。
ルールはシンプルだった。試練を受ける新卒は、Tレックス夫婦が巡回する縄張り内の各所に設置された巣から任意で卵を入手してゴールへと持ち帰らなければならない。
『さてと・・・おっとどうやら唐瓜さんと茄子さんのチームが卵を発見したようですね。今回は割れることも加味して少し多めに卵を用意させていただきました。一つ目のポイントは採取ですが、無事ゴールまで運べるかどうかが見ものです。いかに工夫を凝らせるかも採点ポイントとなります』
獄卒はタフであれというのが信条の鬼灯の横顔は峻厳だった。
その想いに応えるかのように果敢に卵を入手した小鬼らの背後に母恐竜の巨体が迫っていた。
『見つかった!おいっ・・さっさと逃げるぞ!』
背中に背負ったカゴに卵を入れると唐瓜と茄子は血相を変えたまま駆けた。
『ひょええええええええっ!!』
『ひっ追いかけてくる!!どうすんだよアレ!?』
ガアアアアアアアアッ
『耳栓準備してて助かった』
備品のいくつかはもちろん持ち込み許可は事前に得ていた。とはいえ制限もあるため何を選ぶかは各々の裁量に任されていた。
ずっしりと重い卵を背負ったまま猛然と追いかけてくるティラノサウルスの大音量の咆哮に竦む身を叱咤して追撃をかわしながら右往左往する小鬼達の脳裏に『精神的運動会』の悪夢が過ったのは言うまでもなかった。
そんな彼らに追い打ちをかけるような鬼灯の声が拡声器を通して場内に響き渡った。
『ほらほら逃げてばかりでは解決できませんよ。獄卒の底力を見せてください。Tレックスさんには危害は加えないよう言い聞かせてはおきましたが万が一と言うこともありますからねえ』
サラッと物騒なことを言う鬼灯の横で大会を見守る閻魔大王がぼそっとぼやいた。
『・・・鬼』
耳ざとく上司の愚痴を聞いた鬼灯は涼しい顔でのたまった。
『・・・何を今更当たり前のことを。』
『さすが地獄のボスは容赦ないね』
シロが合いの手を入れると、柿助とルリオも同調したように頷き返した
2015年8月26日公開
竜旋処は切り立った崖に囲まれた起伏にとんだ岩肌から吹き出す高温のガスが亡者を苛み、ティラノサウルスを始めとする大小さまざまな恐竜獄卒が支配する刑場だった。
『あれ?儂ここ来たことあったけ?・・でもまあ沙汰を下すことはあっても刑場に来る用事なんかは鬼灯君にお願いしてるからさあ。よく会場押さえられたよねえ大変だったでしょ鬼灯君』
新卒専用の試練のため本来ならいるはずの小回りの利くラプトルなどは難易度が上がるため試練の間は急きょ別の刑場へ出向いてもらっていたのだ。
高台に設置された審査に加わる関係者専用の特設サイトに陣取り、珍しそうに周囲を伺う閻魔大王の瞳はキラキラと輝いていた。恐竜もさることながらデスクワークから解放されたことがより上司を機嫌よくさせているのだろうと鬼灯は冷静に分析しながら拡声器へと手を伸ばした。
『新卒の皆さん今回のテーマはずばりチームワークです。仕事の効率を考えればチームワークは重要なもの。だから前回と異なり今回はチームに分けて参加してもらいました。互いを補いながら知力体力を駆使して頑張ってください。ちなみに優勝したチームには地獄名物の卵セットを差し上げます。』
『いいなあ美味しそうだ』
心なしか前のめりの猿の柿助を軽く睨みながら雉のルリオが言った。
『俺としては微妙だ。ミル×ーム5日分の方が嬉しい』
『それ俺にはわかんないけど、桃太郎の話聞いてから一回見てみたかったんだよねえ。誰か知り合いいないかなあ・・・あ!ほらあそこにいるの唐瓜さんと茄子さんじゃない?』
一般公開はされなかったものの、特別に鬼灯の許可をもらった二匹と一羽も観覧席で大会を見学させてもらっていた。普段はめったに会えない恐竜獄卒の迫力に圧倒されながら見守っていたシロだったが、見覚えのある二人の姿をいち早く発見するとつい前のめりになってしまった。
『シロさん・・落ちても知りませんよ。ここ基本は関係者以外は立ち入り禁止なんですから』

『はい!鬼灯様!』
目ざとい鬼灯の忠告に脳裏に苦い思い出の数々が過ったのか、サッと青ざめたシロが身を正した。
ルールはシンプルだった。試練を受ける新卒は、Tレックス夫婦が巡回する縄張り内の各所に設置された巣から任意で卵を入手してゴールへと持ち帰らなければならない。
『さてと・・・おっとどうやら唐瓜さんと茄子さんのチームが卵を発見したようですね。今回は割れることも加味して少し多めに卵を用意させていただきました。一つ目のポイントは採取ですが、無事ゴールまで運べるかどうかが見ものです。いかに工夫を凝らせるかも採点ポイントとなります』
獄卒はタフであれというのが信条の鬼灯の横顔は峻厳だった。
その想いに応えるかのように果敢に卵を入手した小鬼らの背後に母恐竜の巨体が迫っていた。
『見つかった!おいっ・・さっさと逃げるぞ!』
背中に背負ったカゴに卵を入れると唐瓜と茄子は血相を変えたまま駆けた。
『ひょええええええええっ!!』
『ひっ追いかけてくる!!どうすんだよアレ!?』
ガアアアアアアアアッ
『耳栓準備してて助かった』
備品のいくつかはもちろん持ち込み許可は事前に得ていた。とはいえ制限もあるため何を選ぶかは各々の裁量に任されていた。
ずっしりと重い卵を背負ったまま猛然と追いかけてくるティラノサウルスの大音量の咆哮に竦む身を叱咤して追撃をかわしながら右往左往する小鬼達の脳裏に『精神的運動会』の悪夢が過ったのは言うまでもなかった。
そんな彼らに追い打ちをかけるような鬼灯の声が拡声器を通して場内に響き渡った。
『ほらほら逃げてばかりでは解決できませんよ。獄卒の底力を見せてください。Tレックスさんには危害は加えないよう言い聞かせてはおきましたが万が一と言うこともありますからねえ』
サラッと物騒なことを言う鬼灯の横で大会を見守る閻魔大王がぼそっとぼやいた。
『・・・鬼』
耳ざとく上司の愚痴を聞いた鬼灯は涼しい顔でのたまった。
『・・・何を今更当たり前のことを。』
『さすが地獄のボスは容赦ないね』
シロが合いの手を入れると、柿助とルリオも同調したように頷き返した
2015年8月26日公開
