『って言われても~~どうにもできませ~~ん!!』
一方、現場で果敢に試練に挑む唐瓜の体力は限界寸前だった。足を掬う熱気のこもった岩場に難儀しながら容赦ない鬼灯の仕打ちに突っ込む声にも覇気はなかった。
その時急に足を止めた茄子に唐瓜は手近の岩場へ押し込まれた。
必死に身をひそめながら恐る恐る背後のTレックスを伺うと二人の姿を見失ったのか周囲を警戒している様子だった。
『こんなとこで立ち止まるなよッ』
背後に意識を集中しながら小声で茄子に抗議すると、茄子はしゃがんだまま懐から何かを取り出すと小声で答えた。
『携帯お絵かきセット~
』
顔面蒼白のまま茄子のおふざけに付き合う余力もない唐瓜だったが、テンパる自分と違い逆境にこそ強さを発揮する茄子の大物ぶりにかけるしかなかった。
見れば確かに茄子が常に携帯している紙と筆セットだった。
そして問いかける間もなく紙を広げた茄子は真剣な面持ちでサラサラと滑るような筆さばきで絵を描いた。
茄子の横顔に漂う気迫に釣られ思わず覗き込んだ唐瓜の目に飛び込んできたものは猫好好の顔をしたナニかだった。
『お前なんだよコレッ!?』
『これ?スフィンクス』
『
って違げ~だろ!?』
切羽詰まった状況でも記憶とだいぶ違う姿に唐瓜は突っ込まずにはいられなかったが、茄子は気にした風でもなく答えた。
『だってさ空飛ぶ猫っていったら
バスかこれしか思い浮かばなかった』

『なぜ猫にこだわる必要が!?猫なら火車さんとか他にあるだろ他に!それよかもっとメジャーなペガサスとか龍とか精霊馬とかっ・・そっ、そうだっ!!もっと描きやすい一反木綿とかだってあっただろっ!?』
唐瓜が捲し立てるのは不安の表れだった。
『でも我ながら上手く描けたなあって』
自画自賛する自信満々な茄子に脱力しかけたその時である。

異臭を放つ生温かな液体がボタボタッと敏感な項に垂れ、唐瓜を戦慄させた。それと同時に茄子の持つ紙が大きな影に覆われ、背後にただならぬ殺気が走り抜けた。

『へっ!?』
『ま、まさか!?』
勇気を振り絞り振り仰いだ小鬼の眼前には怒り心頭のTレックスが肉迫していた。
『ぎゃあああああああ』
迫るTレックスの脅威に唐瓜は決断を迫られることとなった。


『こうなったらソレしかない!!いいから出せよ!!茄子ィ~!!』
血相を変え一目散に走りながら唐瓜が叫んだ。
不安は尽きなかったがもはや唐瓜には覚悟を決めるしか起死回生のチャンスをつかむ術がなかったのだ。
『おう!!行っくぞ~~いでよ!!スフィンクス~!!』
茄子が紙を翻した途端、羽の生えた一見ペガサスとも見まがうソレが颯爽と飛び出したかと思うと一瞬で具現化した。
『ニャ~~ン!!』
『・・・なんか行けそう』
見た瞬間唐瓜が納得したのも無理はなかった。
二次元では歪なソレも茄子のセンスで補正され3次元でも充分に騎乗可能な出来栄えだったが不安は拭えないまま前に唐瓜、後ろに茄子が乗り込んだ直後ソレは力強く翼を羽ばたかせ間一髪でTレックスの牙をかわし華麗に空へと舞いあがったのだった。
『頼むから落ちないでくれよ!!』
必死に手綱を繰りながら浮上する感覚に唐瓜は身をゆだねた。
その様子を岩場の影から伺っていた新卒達から一斉に拍手とどよめきがもれた。しかし羨望の眼差しを注ぐ彼らの背後に殺気立ったTレックスが立ちふさがった。
『わっ・・わっ・・・飛んでるよ!!すげ~よ!!やったな茄子!!』
落ち着きを取り戻した様子で手綱を繰りながら、自分の腹に腕を回し必死にしがみ付く茄子の柔らかな頬の感触を背に感じながら惜しみない称讃をおくった唐瓜が地上を見下ろすと得物を逃がし怒り心頭のまま逃げ遅れた新卒を蹴散らしたTレックスが雄たけびを上げながら空を見上げていた。
『ふぉおおおおおお~~!!』
負けじと茄子も握った拳をふり上げ勝利の雄たけびを上げた。
『わわっ・・・バカ!!お前手ぇ離すなってッ・・』
『・・へっ?・・わわわっ
あやうく落ちるトコだった
』
風圧で背後に傾いだ茄子はわたわたと宙を掻いた後、泡食った顔で再び唐瓜にしがみ付いた。
『ったく危なっかしいヤツだなァ・・・しっかり掴まってろ!!このまま一番乗りするぞっ』
頼りになるのかならないのかはさておき、足りない所は補い合って手に入れた思いがけない勝機への道筋であることは間違いなかった。
『おう!!』
元気よく応える茄子と共に思いがけない空の旅をしばし楽しみながら唐瓜は一直線にゴールへと向かったのだった。
2015年8月28日公開
一方、現場で果敢に試練に挑む唐瓜の体力は限界寸前だった。足を掬う熱気のこもった岩場に難儀しながら容赦ない鬼灯の仕打ちに突っ込む声にも覇気はなかった。
その時急に足を止めた茄子に唐瓜は手近の岩場へ押し込まれた。
必死に身をひそめながら恐る恐る背後のTレックスを伺うと二人の姿を見失ったのか周囲を警戒している様子だった。
『こんなとこで立ち止まるなよッ』
背後に意識を集中しながら小声で茄子に抗議すると、茄子はしゃがんだまま懐から何かを取り出すと小声で答えた。
『携帯お絵かきセット~
』顔面蒼白のまま茄子のおふざけに付き合う余力もない唐瓜だったが、テンパる自分と違い逆境にこそ強さを発揮する茄子の大物ぶりにかけるしかなかった。
見れば確かに茄子が常に携帯している紙と筆セットだった。
そして問いかける間もなく紙を広げた茄子は真剣な面持ちでサラサラと滑るような筆さばきで絵を描いた。
茄子の横顔に漂う気迫に釣られ思わず覗き込んだ唐瓜の目に飛び込んできたものは猫好好の顔をしたナニかだった。
『お前なんだよコレッ!?』
『これ?スフィンクス』
『
って違げ~だろ!?』切羽詰まった状況でも記憶とだいぶ違う姿に唐瓜は突っ込まずにはいられなかったが、茄子は気にした風でもなく答えた。
『だってさ空飛ぶ猫っていったら
バスかこれしか思い浮かばなかった』
『なぜ猫にこだわる必要が!?猫なら火車さんとか他にあるだろ他に!それよかもっとメジャーなペガサスとか龍とか精霊馬とかっ・・そっ、そうだっ!!もっと描きやすい一反木綿とかだってあっただろっ!?』
唐瓜が捲し立てるのは不安の表れだった。
『でも我ながら上手く描けたなあって』
自画自賛する自信満々な茄子に脱力しかけたその時である。

異臭を放つ生温かな液体がボタボタッと敏感な項に垂れ、唐瓜を戦慄させた。それと同時に茄子の持つ紙が大きな影に覆われ、背後にただならぬ殺気が走り抜けた。

『へっ!?』
『ま、まさか!?』
勇気を振り絞り振り仰いだ小鬼の眼前には怒り心頭のTレックスが肉迫していた。
『ぎゃあああああああ』
迫るTレックスの脅威に唐瓜は決断を迫られることとなった。


『こうなったらソレしかない!!いいから出せよ!!茄子ィ~!!』
血相を変え一目散に走りながら唐瓜が叫んだ。
不安は尽きなかったがもはや唐瓜には覚悟を決めるしか起死回生のチャンスをつかむ術がなかったのだ。
『おう!!行っくぞ~~いでよ!!スフィンクス~!!』
茄子が紙を翻した途端、羽の生えた一見ペガサスとも見まがうソレが颯爽と飛び出したかと思うと一瞬で具現化した。
『ニャ~~ン!!』
『・・・なんか行けそう』
見た瞬間唐瓜が納得したのも無理はなかった。
二次元では歪なソレも茄子のセンスで補正され3次元でも充分に騎乗可能な出来栄えだったが不安は拭えないまま前に唐瓜、後ろに茄子が乗り込んだ直後ソレは力強く翼を羽ばたかせ間一髪でTレックスの牙をかわし華麗に空へと舞いあがったのだった。
『頼むから落ちないでくれよ!!』
必死に手綱を繰りながら浮上する感覚に唐瓜は身をゆだねた。
その様子を岩場の影から伺っていた新卒達から一斉に拍手とどよめきがもれた。しかし羨望の眼差しを注ぐ彼らの背後に殺気立ったTレックスが立ちふさがった。
『わっ・・わっ・・・飛んでるよ!!すげ~よ!!やったな茄子!!』
落ち着きを取り戻した様子で手綱を繰りながら、自分の腹に腕を回し必死にしがみ付く茄子の柔らかな頬の感触を背に感じながら惜しみない称讃をおくった唐瓜が地上を見下ろすと得物を逃がし怒り心頭のまま逃げ遅れた新卒を蹴散らしたTレックスが雄たけびを上げながら空を見上げていた。
『ふぉおおおおおお~~!!』
負けじと茄子も握った拳をふり上げ勝利の雄たけびを上げた。
『わわっ・・・バカ!!お前手ぇ離すなってッ・・』
『・・へっ?・・わわわっ
あやうく落ちるトコだった
』風圧で背後に傾いだ茄子はわたわたと宙を掻いた後、泡食った顔で再び唐瓜にしがみ付いた。
『ったく危なっかしいヤツだなァ・・・しっかり掴まってろ!!このまま一番乗りするぞっ』
頼りになるのかならないのかはさておき、足りない所は補い合って手に入れた思いがけない勝機への道筋であることは間違いなかった。
『おう!!』
元気よく応える茄子と共に思いがけない空の旅をしばし楽しみながら唐瓜は一直線にゴールへと向かったのだった。
2015年8月28日公開
