鬼灯と俺下を勝手に脳内コラボしたら予想以上に、重い話になってしまった![]()
重い設定でコメディって難しいんだなあと改めて思いました。
で、この作品に出てくる架空の登場人物、団体、名称などはさらに私の妄想設定追加でお送りします。
『いいですか黒崎さん、本来なら貴方大量受苦悩処直行でもおかしくないんですからね。とはいえ人材不足なのも確かですから致し方ありません。くれぐれも身を慎んで励んでください。清水さんもよろしくお願いしますよ』
『はい、寛大なお取り計らいありがとうございますっ』
苦渋の決断をした鬼灯の言葉に新は重々しく頷きかえすと、不遜な態度を崩さない壱哉の脇腹を肘で軽く小突きながら促した。
『ほらっ黒崎さんも鬼灯様にお礼言えって』
新に促された壱哉はしぶしぶと言った面持ちで鬼灯へと手を差し出しながら言った。
『貴方には感謝している』
壱哉の差し出した手を無言で見下ろした鬼灯だったが、心配そうにこちらの反応を伺う小動物のような新に免じてその握手を受けることにした。
むぎゅっ
何気なく壱哉の手を握った途端、足元から悪寒が走り抜け鬼灯のこめかみにメキメキと青筋が立ったかと思うと反射的に金棒をおもいきり振りきっていたのだった。
ドカッ![]()
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『うがっ・・・・・』
金棒は壱哉の腹を直撃し、容赦なく柱へと叩きつけた。
『くっ黒崎さん!?どういうことですか鬼灯様!なんで黒崎さんを?』
青ざめ動揺する新を手で押しとどめた鬼灯は威圧感漂う金棒を肩に担ぎあげると眉間に筋を浮かせたまま壱哉に言った。
『懲りないヒトですね貴方。よりにもよってこの私に色目を使うとは・・・衆合地獄じゃヌルすぎますね。半世紀くらい大叫喚地獄堕ちろ』
壱哉の手を握り返した時、壱哉は言葉こそ発しなかったが全身で邪な気を発していたのだ。もちろん壱哉の下心は本気ではなく生前の身についた習慣のようなものに過ぎなかったが、他の亡者の手前壱哉を特別扱いすることに批判のある中の決断だっただけにあえて厳しくする必要があったのだ。
『申し訳ありません!!鬼灯様!!もうっなにやってんだよ黒崎さんっ・・・俺からもよく言い聞かせますから・・・だから勘弁してやってくださいっ』
壱哉のために必死に弁明する新を鬼灯は冷めた目で見据えながら言った。
『そうやって貴方方が彼を甘やかすのは彼のためになりませんよ。悪因悪果天網恢恢・・己のしでかした罪は己に降りかかる・・それが地獄の流儀です。清水さん、貴方が獄卒なら研修からやり直していただきたいところですが・・はあ・・とはいえ貴方は天国所属のスタッフですから仏の慈悲を尊ぶのもしかたありません。世相を反映し、多苦悩処は現在改定されたため性癖事態が罪に問われることはありませんが、彼の罪は邪淫罪だけではありません。叩けばいくらでもホコリの出る身だということは貴方もよくお分かりのはず』
鬼灯の言葉に、新は不喜処地獄へと落とされた吉岡の処遇へと心を置いた。壱哉の悪事に加担した吉岡は潔く己の罪を認めどんな裁きでも受けると言い切ったという。そして始終早逝した壱哉の処遇だけを心配していたらしい。そんな吉岡に閻魔王が下した裁きは浄玻璃鏡に映し出された吉岡の弱点を責めることだったのだ。吉岡のカニ嫌いを知る新は、休みの日にさっそく不喜処に様子を見に行ったのだが、すでにその時には吉岡の姿はなく柿助という名のニホンザルから吉岡の行方を教えてもらったのだ。
『え?吉岡さん三途の川に?』
『うんそう。あの人鬼灯様の提案でここにしばらくいたんだけど元々動物を虐待したわけでもないし。カニがトラウマってのも俺なんか放っとけなくてさ。それに話してみたらスゴクいい人だったんだ~』
壱哉の命で有能な秘書然とした吉岡が迎えに現れた時は彼に対する本能的な反発が確かにあった。壱哉の横暴を知りながらどんな命令にも従う吉岡を憎んだこともあった。しかしその心証は彼という人物を知れば知るほど変化してゆき最後には尊敬へと落ち着いたのだ。
『うん、そうだな』
だから柿助の言葉に新は素直な心地で頷きかえしたのだった。
柿助たちと別れ吉岡を訪ね三途の川へと足を運んだ新は休憩中の奪衣婆に話を聞くことができた。
『あん?あんたあの人の知り合いかい?だいぶ趣が違うねえ?いったいどんな知り合いなんだか知らないけど・・・ヒヒ』
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長椅子にふんぞり返り新が淹れた茶をすすり土産の和菓子を齧りながらおかしな想像を巡らす奪衣婆に苦笑しながら新はさらに話を聞くことができた。意外と話し好きらしい。
並んで長椅子に腰かけ奪衣婆を伺うと、何故か頬を染めた奪衣婆はひどく悩ましげな面持ちでため息をもらすと一呼吸の後語りだした。
『ありゃなかなかイイ男だったよ。年輪感じるっていうか鬼灯様とはまた違う魅力があってさ・・かなりの硬派だったけど相当女泣かせの罪な男だよねぇ。ま・・だからといってアタシにとっちゃ数居る亡者の一人に過ぎなかったんだけどねえ・・・ふう~~』
(
吉岡さんっ奪衣婆とナニがあったんだ!?)
乙女のように頬を染める奪衣婆から漂う気配に居心地の悪さを感じて思わず目を逸らした新の足元を小さな物体が横切った。
――カニ?
よく見るとそれは三途の川に生息するという巨大ガニの子だった。
『等活地獄の予算を考えても不喜処にいないカニをわざわざ大量に用意するのは不経済なんですよねぇ。厨房から確保するのも限界がありますから。
あ、そうだ・・・!三途の川は刑場ではありませんがこの際しかたありません。貴方の呵責もできスタッフとしてもコキつかうことができる・・・まさに一石二鳥の名案です』
苦慮の末鬼灯がこの場所へ吉岡を寄越した理由に思い至った新はカニ嫌いの吉岡に密かに同情を寄せながら不喜処で見かけた柿助の同僚だという白い犬を思い浮かべた。
(すごく人懐っこい陽気な犬だったけど・・・亡者相手に豹変した時はビビッたよなあ)
子供の頃のトラウマで大きな犬が苦手な新としては吉岡の体験した恐怖は察して余りあった。
しかも新を驚かせたのはそれだけではなかった。
『お前らサボってると夜叉一先輩にまた怒られるぞ』
(俺、雉って初めて見たかも。にしても・・・・犬猿雉って
)
シロと紹介を受けた白い犬の後を追うように現れた雉のルリオを前に子供の頃読んだおとぎ話が浮かんだ新はふざけ半分で言ったのだ。
『なんか桃太郎のお供みたいだなあ』
『うん、そだよ~』
『え~~~!?』
すると顔を見合わせた三匹はあっさり頷き新を驚かせたのだった。よくよく話を聞いてみると天国の桃源郷で漢方薬局の管理をしている白澤の助手として元主人の桃太郎は働いているらしい。
――あ、もしかして
新の脳裏に『タオタロ~くん』と白澤に呼ばれている桃印の三角巾を被った中年男性の姿が浮かんだ。
(あれが桃太郎だったのか
なんか絵本のイメージと違ってて微妙だよなあ
)
鬼灯の計らいで天国と地獄に分かれた主従だったが、折を見ては桃太郎の様子伺いをしているとのことだった。
『俺たち頑張ってる桃太郎のこと応援したいからさ~』
そう言って機嫌よく尻尾を振るシロの顔は輝いていて新を勇気づけたのだった。