唐瓜実家



配達係り

「安全安心クールがモットーの地獄運送で~す!!お届けもので~す」



唐瓜母

「は~い。やだ・・また荷物?はあ~困った娘ねえ・・・あら?珍しい・・

茄子ちゃんからだわ・・って・・・これ??」



唐瓜姉

「なに?私宛?・・・こないだ注文したランジェリーもう届いたのかな・・・え?茄子から?

ってなによ・・・これ??」



チューリップ赤



庭先に置かれた小さな鉢植えに植わってるのは珍妙な花だった。夕日に染まりただ静かに風に揺れている。



唐瓜姉

「ゲッ・・・これって・・・もしかして金魚草・・?実物初めて見た・・・なんかキモッ



むかっ



金魚草

「・・・ヒ」



はてなマーク



心の声がダダ漏れになった瞬間だった。鬼灯の指導の下、金魚草の世話を買って出た茄子は朝な夕なに一生懸命に世話を焼き、愛情持って話しかけたその成果が今最大限に発揮されることとなった。



金魚草

「ニュ~!!ヒニュ~!!ヒニュ~!!」



むかっむかっむかっ



唐瓜姉

むかっ嫌がらせか!!」



その絶叫は周囲に響き渡り、聞いた人々を凍り付かせた。見た目のインパクトもさることながら一度聴いたら忘れないとまでされる不快な鳴き声はコンテストにおいてはマニアの心を打つ(常人には一切の理解ができない)独自の審査基準で評されるものであり、言語を解さない金魚草を愛好するあまり芸を仕込む者すらいて、まさに『空耳』としかいいようがない独特なイントネーションは高く評価されるシロモノだった。



金魚草

「ヒニュ~!!ヒニュ~!!ヒニュ~!!」



むかっむかっメラメラ



しかし胸へのコンプレックスを人一倍抱える彼女にとって、金魚草の無垢な叫びは許しがたいものでしかなかった。


同情するような周囲の視線まで悪意が込められているように思えて、ブチッと何かがキレる音がした気がした。



唐瓜

「ただいま~・・・姉ちゃん・・・ヒッガーン!!



唐瓜姉

むかっゴラアッ!!ケンカ上等だぞマロマユ!!」



茄子を連れ事の成り行きを見届けに実家に戻った生真面目で責任感の強い唐瓜は、『貧×』と鳴き叫ぶ金魚草を前に殺気立ちこぶしを握り締め鬼の形相で息巻き一瞬で

ヤンちゃしてた頃に戻った姉と遭遇して凍りつくこととなった。



唐瓜姉

むかっおたんこ茄子!!あんたの仕業かっ!!」






鬼灯の冷徹 茄子さん反省・・ごめんなさい


茄子

「・・・お姉ちゃん、ごめん・・あせる



姉の剣幕に茄子なりに反省したらしくしょんぼりと肩を落とす殊勝な態度に姉はムッとしつつもしぶしぶ引き下がったが、この瞬間、唐瓜の思考は停止し、まさに真っ白状態だった。



しかしすぐに押し寄せてきた混乱とともに辛うじて掻き合せた理性で事態の打開を図ろうと必死だった。





唐瓜

「金魚に変なこと仕込むなよ茄子!!姉ちゃんブチギレてるし・・どうしたら・・いっそこのまま鬼灯様に送り返すしかあせる



テンパった唐瓜には金魚草を黙らせる術はなく、ヒンシュク覚悟で鬼灯に丸投げするかと配達に来たまま強張った顔で姉を伺う配達係りに縋るような眼差しを向けた矢先だった。



ひらめき電球



茄子

「あ、そうだ」



唐瓜同様、殺気だった姉の剣幕に固まっていた茄子が突然場になじまない能天気な甘えた声で言った。



茄子

「お姉ちゃん!!コレ鍋にしても美味しいって~・・・お肌ツルツルになるし~ダイエット効果もあるって・・鬼灯様も言ってたよぉ?」



耳!?



唐瓜姉

メラメラ・・・・・それ・・ホント?」



茄子が発した言葉は、まさに黄門様の印籠に匹敵する絶大な効果を発揮するものだった。



汗



唐瓜母

「そ、そうね汗。今夜は寒いし・・・お母さん捌いてあげるから・・・金魚鍋にしましょドキドキあ、茄子ちゃんも食べていってね」



茄子

「は~いドキドキ



唐瓜

「・・・はあ~~~DASH!



すかさずフォローを入れる母に元気よく茄子がのっかり事態が良い方向へと転じる気配に唐瓜は心底安堵しながら恐る恐る姉を伺った。



ドキドキ



唐瓜姉

キラキラよし!!食うぞ~!!コラーゲンたんまりとってお肌すべすべになってオトコ共を見返してやんだからっ」



こうして花より団子がモットーな姉により観賞用から食用へと転落した金魚草の運命は決まり、料理オンチの姉とは違い久しぶりに料理上手な母の手料理に舌鼓を打つことになった。



半身は刺身で、残りは鍋の具として振る舞われた。



唐瓜&茄子

キラキラは~~~ドキドキ



散々冷や汗をかいた後の締めの雑炊は格別で五臓六腑に染みる味わいだった。





クセがなく淡泊な味わいながら弾力があるぷりぷりの白身はもちろん、金魚の粗でとった黄金の出し汁と野菜の旨みが混然一体となりしみ込んだ雑炊に至るまで余すことなく食べつくし、御相伴に預かり茄子共々『美味でヘルシー』を堪能した唐瓜は金魚草に姉の名をつけたことを忘れようと心に誓った。



その夜、庭の片隅に小さな金魚草の墓がひっそりと作られたことは唐瓜と茄子だけの秘密だった。





※この作品に登場する金魚草は『鬼灯の冷徹』に登場する架空の動植類であり、現実に存在する『金魚草』及び『金魚』とは一切関係ありませんのでご了承ください。

生態及び味に関しては私の想像です。


この記事を読まれて気分を害した方々も無礼をお許しください。

申し訳ございませんでした汗