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ドクンドクンドクン
――無防備な恋人を前に何も感じなかったら問題だぞ。
(やばっ・・・黒崎さんの言ったとおかも・・・)
泡にまみれた逞しい壱哉の身体が発する芳香が、理性を押し流してゆくのを噛みしめながら、引き寄せられるようによろりと一歩壱哉に近づいた新の身体はすぐに彼の逞しい腕の中に納まることになった。
「・・どうしたんだ・・急に・・・新?」
「・・・・」
期待と躊躇いの狭間で揺れる壱哉の問いを無言ではぐらかしても、互いの身体の狭間で高まる熱はもはや誤魔化しようもないものだった。
「黒崎・・・さ・・・・んん・・・」
壱哉によって摘み取られた初物の早生の実であったが、淡く色づき甘い香を放ち今まさに食べごろとばかりの様子で、切なさを滲ませた眼差しをぶつけ、愛しさの募る名を象る物欲しげに開く唇に引かれるように顎をあげた途端、蕩ける口づけが下りてきて新を優しく包み込んでくれた。
「ふっ・・・あ・・むっ・・・はっ」
がくがくと萎える足に抗うように泡で滑る素肌に必死にしがみつき、熱く濡れた愛撫と抱擁のもたらす互いの鼓動が混ざり合い紡ぎだすリズムに導かれるまま情熱的に愛を交わした。
「ああ・・ふっ・・・んんっ・・・」
甘い吐息をこぼし充足感に酔いしれながら手すりにもたれかかったままシャワーの飛沫が火照った敏感な素肌の上をなぞるようにゆっくりと伝い、爽やかな香と共に纏わりつく石鹸の泡を排水溝へと流す様を追っていたぼやけた視界を転じ、ゆっくりと身を離す壱哉へと夢心地のまま視線を投じるとすぐに情感たっぷりの甘い口づけが返ってきた。
――――黒崎さん・・・大好き
強く実感した瞬間、突如頭部と臀部にずっとあった違和感が消えた。もっと声を聞きたい、もっと壱哉を感じたいのだと貪欲なまでに餓えていた心が満たされたからだろうか?
「新・・猫耳と尻尾が消えたぞ」
「・・・・・へ?・・・ほんとだ」
湿った髪をくしゃりと手ぐしですきながら、足元を見ると濡れた猫耳カチューシャとシャンプーハットが目に入った。
安堵だけではない残念な気持ちもしたが、どうやらそれは壱哉もらしく声に少々の落胆が感じられた。
「・・・黒崎さんはあっちの俺のがよかった?」
子供みたいに拗ねてしまうことにばつの悪さを感じながら問うと、呆れたように壱哉が言った。
「あっちもこっちもないだろ?・・・どんな姿でもお前はお前だろう?」
揺らがない強い眼差しで見下ろす壱哉の想いが、新には無性に嬉しくてたまらなかった。
チュッ
逸る心を必死に抑え、これまで幾度なく味わった甘い口づけを交わしながら、充血した唇で張りのある壱哉の唇の形や感触、その温もりをしっかりと確かめた後一つ深い吐息を漏らすと、一途にこちらを見つめる柔らかな輝きを放つ、彼の瞳を覗き込んだまま新は告げた。
「・・・・うん。・・・・へへ・・・そだな。ありがとな?だ~い好きだぜ、黒崎さん!」
感情がダイレクトに伝わってしまう猫耳と尻尾を失った以上、これまで通り言葉や態度で好意を示さなければならないのは奥手な新にとってはほんの少し勇気がいることだったが、壱哉の笑顔を見たら全てが報われたのだった。
おしまい