―――ケモノ耳!?
(って・・おいおい・・・これを俺にどうしろと・・?)
樋口
「・・・あの・・清水君?・・・くれるのはいいんだけどさ・・コレ、なんの耳かな?・・・できればバニーの方が俺の好み・・・」
すると新とおぼしき少年はそっけなく言った。
従魔あらたん
「ナニって見りゃわかんだろ?・・・犬に決まってんじゃん・・あ、ちなみにウサ耳はもう貸出し中だから」
――はい?
樋口
「え?・・犬ってこんなパフパフだったっけ??」
―――貸出し中って・・・
(ウサ耳人気はやっぱ不動なのか!?・・・だよなっ!やっぱいいよなあウサ耳)
従魔あらたん
「パフパフいうなっ・・・っていいだろ別に!俺、・・・・・大っきい犬・・・・苦手だし」
・・・・・
『ぱふぱふ』という意味深なワードになんとなく顔を見合わせ頬を染める新と樋口。
大<小!?
少年の言葉に樋口の脳裏にサンダーを皮切りに走馬灯のように駆け抜けた犬達の中からちっこくてフワフワの愛らしい小型犬の姿が浮かんだのだった。
―――あ
従魔あらたん
「納得いったんならさ・・・ソレつけてみれば?」
樋口
「・・・・・・うん、そうだね~ってオイオイ・・・それってもしかしてコレを俺がつけろってこと!?」
脳内劇場で未来の彼女に愛玩犬のコスをさせていた樋口は、新の言葉に一転青ざめるはめになった。
(いやいやいやおかしいだろ!なんでわざわざヤローの俺にワンちゃんコスさせる必要あるのか誰か説明してくれよ!?)
少年の言葉に腕組みのまま微動だにしなかった大将をはじめ仕事の手を止めたスタッフまでもが感動の面持ちで頷いているのを見た樋口は呆然とした面持ちで途方にくれることとなった。
従魔あらたん
「・・・・兄ちゃん早くう」
――
―――萌
おねだりするように小首を傾げ上目づかいで覗き込まれた樋口の心臓が大きく高鳴った。
―――大将!!グッジョブ!!
(ええい!!ままよ!!)
すっかり大将をケモノ耳愛好家と勘違いしたまま、樋口は成り行きに任せるように己の頭へとパフパフな感触が心地よい、『犬耳カチューシャ』を装着したのだった。
キラキラリン
従魔あらたん
「へえ~イヌ苦手な俺でも平気かもな~いいんじゃん?な?大将」
(頼んだら兄ちゃんお手、してくれっかな~?)
大将
「似合ってる似合ってるよお!さっすがウチの常連さんだあ」
異変を感じた瞬間目を固く閉じた樋口だったが、口々に賞賛を浴びせられ好奇心につられるように目を開けた瞬間だった。
ガラリッ
突然背後で開閉音がしたかと思うと、ゾッとするような悪寒が背筋を駆け抜けたのである。
―――え??
???
「・・・・ほう、誰かと思ったら樋口じゃないか・・?なんだ・・お前いつから従魔になったんだ?」
―――この声って・・・まさかっ!?
樋口
「・・・・・く、黒崎!?」
よりにもよってこんな素っ頓狂なイタすぎる格好で居る時に、一番会いたくない相手と遭遇してしまった己の不運を呪い、青ざめたまま固まった樋口に、魔王こと黒崎壱哉は一言のたまったのである。
魔王
「・・・・・ほう、これがホントの・・・
ワン、ショックや~~!!・・・変!!(和ん食屋編)
と、言う奴か・・・・でかしたぞ!ハニー」
ハニー!?
従魔あらたん
「へへ、学級○ンコの仇はとれたみたいだな?黒崎さん・・・ん」
壱哉からご褒美とばかりにチュウをされ、うっとり顔の新を呆然と見返したまま樋口は言った。
(・・俺達同志じゃなかったのかい?・・・・清水君)
樋口
「・・・・く、黒崎がオヤジぎゃくってしかもこんな子とチュウって・・・ユメなら早く覚めてくれ~~~」
魔王
「ふん・・・・・もう一度言ってやるから耳の穴かっぽじろ、樋口崇文!!・・
ワン、ショックや~~!!・・・変!!・・・ふふふっ・・
は~っはははは!」
気が遠くなる意識の片隅にいつまでもこだまするのは魔王の高笑いとブリザード級の寒いオヤジぎゃぐだった。
暗転
う~~んう~~ん
一晩中悪夢にうなされたあげく、目覚めた樋口を待っていたのはやるせないほどの二日酔いだったのである。
樋口
「・・・・・・・うっぷ」
「ワン、ショックや~~!!・・・変!!・・・ふふふっ・・
は~っはははは!」
おしまい