『うわっ!!・・こっちくんなって・・』
新の持つ紙箱から香る甘いシュークリームの匂いに誘われ、先陣を切った一際大きなたぬきが威嚇するように牙をむき出した瞬間だった、口に銜えていた壱哉のS・Gカードがヒラッと地面に舞い落ちたのだ。
『・・・な・・なんだよお・・・ん?』
たぬきに襲われた情けなさにがくりとその場にへたり込んだ新の視線の先にあったのは、アスファルトの上で淡い夕日色にきらめくカードだったのである。
◆清水新はアイテム【謎のカード】入手した!
「・・・それ、黒崎さんの?・・・そっか。大事なもんなら無くさないよう気ぃつけなよ?」
そのカードに触れたた瞬間、トクンと温かく脈打つのを感じたことを思い出しながら、それがなにかはわからなかったが壱哉にとっても、そして自分にとってもやはり『特別』なものであると感じたのは気のせいではなかったらしいことに、新は喜びを感じていた。
「・・ああ、ありがとう。本当に助かった・・お前は命の恩人だ・・このカードは俺にとって大切なものだから・・拾ってくれたのがお前でよかった」
!黒崎壱哉はアイテム【薔薇色のS・Gカード】を取り戻した!
!黒崎壱哉を『愛』する『清水新の想い』が【S・Gカード】をさらにグレードアップさせた!
壱哉が新共々手元に返ってきたS・Gカードを確認すると、思った通り残高は大幅にアップしており、さらにカードの色が漆黒からほんのりと色づく薔薇色へと変化したようだった。
30,280,001S・G
「・・・カードの色が変わったのか?」
驚きにひとりごちる壱哉の言葉を聞きつけた新が不思議そうに首を傾げながら言った。
「ん?・・そんカード、俺が拾った時からそんな色だったと思うぜ?」
!
「・・・そうか・・そういうことか」
一人納得する壱哉に新がムッとしたように口を挟んだ。
「一人で納得すんなっての!・・全部隠さずに話してくれる約束だろ?」
壱哉は腕の中で上目づかいでこちらをじっと見つめる新を見つめ返した。
すると案の定気恥ずかしかったのか、新は身じろいだものの、全てを受け止めようとするかのように決して目線は逸らさなかった。
「ああ・・そうだったな。新、このカードは・・俺の魂の象徴なんだ。そして俺をこの世界に送り込んだ悪魔がこれを寄越した・・といったら信じるか?」
!!
「はあ?・・悪魔ってなんだよっ・・それっ?」
壱哉の予想通り呆気に取られたように半開きだった口を、今度はへの字に結んだ新は考え込むように押し黙った。
「信じられないのも・・無理はないが、これは本当のことだ。このカードも俺が手にした時は確かに黒かった」
そうして壱哉はここまで自身の身に起きたことを包み隠さずに新に打ち明けたのだった。
この世界に来てしまった理由、ネピリムの存在とその目的、そしてカードの意味・・
話す間新は無言だったが、やがて覚悟を決めたように顔を上げた。
「・・・信じるよ、俺。・・・黒崎さんの言うこと・・信じてやる」
確かに荒唐無稽な話ではあったが、実際にこの目で消滅しかけた壱哉の姿を見てしまった以上、もはや疑いようもないことだった。
「・・・黒崎さん・・カードいいか?」
それでも確かめておきたくて、カードを渡すよう要求すると、壱哉はまったく迷うそぶりすらみせずに新の掌の上に大切な命の証しともいうべきカードをそっと乗っけてくれたのだった。
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トクントクン
「・・・あったけえ・・俺の手の上で・・まるで生きてるみてぇに脈打ってるこれが、あんた自身なんだな」
まるで小鳥のヒナを手の中に包み込んだように、温かく脈打つカードを見つめた新は、意を決したように顔を上げると、いきなり壱哉の唇を奪った。
(+10,000,000)
かすめるように口づけたそれは一瞬のできごとではあったが、大胆な自身の行動に頬を火照らせながらカードに目線を落とすと、思ったとおり残高は大幅に増えており、新の確信を充分に裏付けるものだった。
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(うわっ・・残高も一気に1000万も増えたみてえだけど・・なんかカードの色もさっきよりさらにキラキラんなった気ぃすんな・・ううう、確認できたのはいいけど・・やっぱ恥ずかしいぜ。
だいたい黒崎さん・・俺にキスされたくらいでんな喜ぶなんてさあ・・ま、まあ俺も黒崎さんのこと言えねぇんだけどさ・・ぽっ
)
壱哉から熱い眼差しが注がれるのを意識しながら、新はさらに緩みそうになる口元をムッと引き結んだまま壱哉にカードを返した。
「・・・返す、・・ありがと」
新からの大胆なスキンシップに驚きながらも、どうやら信じてもらえたことに安堵しながら、カードを受け取った壱哉はあらためて新を見つめ返した。
「・・でもまった・・!まだ聞きたいことあんだけど」
甘い雰囲気にも惑わされずに、新はとことん追求する構えのようだった。
そんなしっかりしたところもまた好ましく思いながら壱哉はたのもしい新に惚れ直しながら促すように鷹揚に頷きかえした。