六日目/昼



「・・・ん?・・・もうそろそろ新との約束の時間だな・・公園に行ってみるか」



さっさと気を取り直した壱哉はさっそく待ち合わせの公園へと向かった。



公園に到着すると、すでに新の姿があった。


前回同様東屋のベンチに腰掛け肩にかけたタオルで汗を拭いながら手持無沙汰な様子で待っていた新だったが、壱哉の姿を目ざとく見つけると立ち上がり嬉しそうに元気よく手を振った。



「新、待たせてしまったか・・?」



「んん、大丈夫だぜ?・・俺も今来たとこだし・・・はい、これ黒崎さんの分な」



とりあえず今朝の件は新が帰宅してから話すことに決めた壱哉が隣に座ると、新は機嫌よく約束の弁当を差し出してきた。



自分の分を受け取った壱哉が期待感に胸を膨らませながら弁当を開くと、素朴だが美味そうなおかずと飯がぎっしりと詰め込まれていた。



「えっと・・今朝カレーにも使った牛肉が残ったから生姜加えて時雨煮にしてみたんだ。それとメインは塩鮭を焼いたのだろ?・・それからもやしと人参のピリ辛胡麻和えと、あとは梅干し。・・・ど?黒崎さん」



活き活きと自作弁当を紹介する新を見やった壱哉は、満足そうに頷きかえした。



「ああ・・今回のも美味そうだ。・・さっそくいただこうか」(+300,000)



「うん・・・じゃ、俺もいただきます」



壱哉はさっそく牛の時雨煮を食べてみた。以前食べたことのあるきんぴらや肉じゃがも美味かったが、甘辛味の牛肉の佃煮もやはり絶品だった。



「・・美味い。甘辛さの中に生姜の風味も効いていて箸が進む一品だな。飯と一緒に食べるとさらに美味い」



絶賛する壱哉の言葉に、もりもりと自作弁当を食べていた新は嬉しそうに言った。



「へへ・・黒崎さんに喜んでもらえてよかったぜ」



ベンチに並んで座りながら期待通りの弁当に舌鼓をうっていると、ふと誰かの視線を感じた。



―――!



(・・・なんだ?)



顔をあげ周囲を見渡してみたが、とくにおかしな動きをする者はなく自意識過剰ぎみな自身の反応に苦笑した壱哉はさりげなく隣で弁当を食べる新の様子を伺ってみた。



(ん・・?・・新のやつ、口元に飯粒がついているな)



さて、どうするかな



★飯粒をとってやる(+300,000)



「新・・・いいか?」



「んあ?」



!?



驚かさないように一声かけてから、指で新の愛らしい口元についた飯粒をとってやった壱哉は、次の瞬間迷うことなく指にくっついたその飯粒を舐めとった。



!?



『なっ・・・なにすんだよっ!?』



(恥ずかしがり屋の新なら、こんな感じの反応を返すと踏んだんだが・・)



確信犯的に、新の反応を予測しながら様子を伺ってみたのだが、やはり恥ずかしさはあったのか新は照れたように頬を染めこそしたものの、思いの外素直に礼を述べ壱哉を拍子抜けさせたのだった。



「・・・米・・ついてた?・・・ありがと、黒崎さん」



「ああ・・飯粒一つ無駄にしたくないからな・・だろう?」



「・・・ん、そだな」



!!



(新のこの思わせぶりな反応・・もしかしたらこれは、人目がなければ・・チュウで取ってもいけたんじゃないのか?)



ほっそりとした顎に手を添え魅惑的な口元についた米粒を唇でとってやれたのかも、と壱哉が妄想を逞しくした時のことだった。



ガサササッ



すぐ近くの木陰から人の気配がして思わず顔を上げるとなんとそこには、昨日会ったばかりの気まずそうな及び腰の樋口の姿があったのだった。