「・・・となると・・やはり怪しいのは樋口・・か?」



さすがの壱哉も未だ樋口に対し鬱屈した情念のような暗い感情を抱えている様子の吉岡に彼の居場所の探索依頼をするのは気が引けた。あんな情熱的な告白を聞いた後ならば尚更である。



(もしかすると吉岡は、俺が変な遠慮をする方が傷つくかもしれんが・・・やはりこればかりはな。・・そう言えば前に樋口に遭遇した時に名刺をもらったんだったな)



懐を探り名刺入れから【樋口生花店】をスマートに抜き出した壱哉は、携帯で明記された番号へかけてみた。しかし繋がったものの、『定休日』のアナウンスが流れるだけだったので、諦めざるを得なかった。



(・・休みだとすると、奴の行きそうな場所の心当たりと言うと・・)



壱哉はこれまでに樋口に遭遇したいくつかの場所を思い浮かべてみた。しかし気づくといつの間にか再び周囲は霧に覆われていて遠くまで見通すことはできなかった。恐らく新が立ち去ったことで、再び障壁が復活したのだろう。



破るためには絆の力が必要だとすれば、一度だけこの世界で樋口と遭遇したあの場所を置いて他にはなかった。



(よし!・・【商店街】だな)



壱哉は再び気合いを入れると、障壁の亀裂を探して第六巻を研ぎ澄ませた。

すると集中する壱哉に呼応するかのように、霧が途切れ再び【商店街】への道が開けたのだった。



躊躇なく霧のアーチを潜りぬけると前回同様、その先は往来の絶えた【商店街】だった。



さて樋口を探そうかと勢い込んだ矢先だった。



~~~きゅるるっ



不覚にもこれまで沈黙していた腹の虫が鳴いたのである。






その余りの情けなさに我慢の効かない腹を叱咤する壱哉の背に、何者かの悪意のある視線が注がれたのだ。



「誰だ!?」



しかしサッと振り向いても辺りは閑散としていて人の気配は感じ取れなかった。



(くそっ・・ネピリムか?)



現実世界でも敵は多かったが、それでも壱哉は直感でそれとは別の次元の者だと感じた。







※実在する店名とは関係ありません。またゲーム中にも登場しないこの作品だけの設定です