「喜んでもらえたようで良かった。それと・・・朝話していた布団の件だが丁度いいのが手に入ったんだ・・見るか?」



壱哉の言葉に好奇心を刺激された新だったが、腕時計を確認すると残念そうに言った。



「見たいけどさ、夕飯の支度しねぇと・・・だから後の楽しみにとっておいていい?」



「そうか?・・・わかった、お前がそうしたいなら俺はそれでかまわない」



帰宅早々、休む間もなく冷蔵庫から米櫃を取り出す新を前に再び汚名返上のチャンスが訪れたことを悟った壱哉は、颯爽と名乗りを上げた。



「新、米を炊くなら俺がやっておくから先に風呂に入ってきてはどうだ?」



昨夜のことがあるからなのか、新は一瞬躊躇したように疑念に満ちた眼差しを向けた。



「大丈夫、米を炊くくらいなら俺でもできるぞ?・・安心しろ」



やけに自信満々な様子の壱哉の態度に一抹の不安を感じながらも、新は躊躇いがちに頷きかえした。



「そっか?じゃ頼んでいい?・・今夜は時短メニューだからお言葉に甘えて先に風呂すっかな」



腹をくくったのか新は風呂の準備を整えると風呂場へと消えて行った。



心配性の新を見送った壱哉はネクタイを解きジャケットを脱ぎ腕まくりして緊張の面持ちでキッチンに立つと、まるでオペを前にした外科医のように両手のウォーミングアップをしながら構えた。



「ふっ・・・いかに俺とはいえ、今更洗剤で米を洗うなんてベタなマネはせんぞ。きちんと量り、適度に研ぎメモリに沿って水を張ればいいんだったな・・・よしっ、完璧だ」



以前、()から教えてもらった手順を再確認しながら、慎重に米を研ぐ壱哉の脳裏に口を酸っぱく繰り返す()の声が過った。



『いいか、黒崎さん・・・米だけは無駄にしないでくれよな・・・って言った端から洗剤入れようとすんなっ!!ちゃんと量って、こうやってザルん中で研げば米もこぼれねぇし炊飯釜も傷つかないからな・・・ほら、やってみ?』



『・・・こうか?なんだ、やれば俺もできるじゃないか』



手取り足取りじっくり新からレクチャーを受けた至福の一時を思い出しながら、壱哉はせっせと米を研いだ。(+200,000)


もっとも壱哉が米研ぎに関して目覚ましく上達したのにはわけがあったのだが、・・・・・・



『米、無駄にしたらキス、お預けだからな』



!!



『・・・俺は米研ぎより夜伽の方が・・得意なんだが』



むかっあんたは~ソレばっかだな・・こらっ!真面目にやれ~っ!!俺、本気だかんなっ!?』



可愛い恋人の手厳しい指導に返した壱哉のボヤキが却下されたのは言うまでもない。



「米を無駄にしたら新にチュウしてもらえなくなるからな・・・」



無事米を仕掛け終わり後は炊き上がるのを待つだけとなったら、再び手持無沙汰になってしまった。そうなってくると、気になるのは風呂場の方から聞こえてくる水音だった。