『俺ん部屋の合鍵。渡しとくからさ・・無くさないでくれよな?』(+100,000)
どこか緊張した初々しさを含んだ笑顔で合鍵を渡した時の新の姿を思い返した壱哉が、初めての体験に弾む心地のまま新から預かった合鍵を大切そうにキーケースに仕舞った矢先のことだった。
ピンポーン
それは留守番して初の来客だった。
「誰だ?・・ああ・・もしかするとエアコンの設置に業者がきたのか?」
普段から来客の対応は公私ともに秘書の吉岡任せだった壱哉は、ここが自宅ではなく『大切』な新の部屋であることを自覚しながら、それでも元来肝の据わった男であるがゆえの無防備さで確認もせずにドアを開けたのだが・・・
!!
開けた瞬間壱哉は後悔することとなった。
目の前に現れた人物、それは壱哉がこの世でもっとも苦手とする生き物・・『オバサン』だったのである。
◎人物難LV.3発動
「あら!こんにちは~あ~た清水さん?」(-200,000)
まるで先手必勝とでもいうかのような押しが強そうな甲高い声の持ち主だった。
中年太りの体を窮屈そうに派手なスーツに包み、精いっぱいの技巧を駆使したと思しき有無を言わせぬ迫力を放つ目力、すべての嗅覚を奪うかのような強烈な香水の芳香をふりまく人物を前に、泣く子も黙る金融業界の黒幕ともいうべき黒崎壱哉はまさにガマガエルに睨まれたナメクジのごとく情けない有様だったのである。
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「・・ああ、いや。俺は留守番の者だ」
動揺を悟られまいと必死に取り繕う壱哉を頭の先からつま先まで素早く品定めすると『オバサン』は揉み手で舌なめずりをするかのような満足そうな笑みを浮かべながら言った。
「あらっ?そうなの?・・じゃあおホモ・・コホッ・・お友達なのかしらあ?」
!!
(この女・・確かに今俺を見ておホ×達ってぬかそうとしたなっ・・・侮れん)
詮索するような不躾な訪問客の態度に辟易しながら気色ばむ壱哉の心をまるで見透かしたかのように、彼女は言った。
「実はねえ・・あたくし、お布団の訪問販売をさせていただいてるんですのよお?」
この魔法の言葉はとうの昔に忍耐が切れかけていた壱哉の興味を引き戻すものだった。なんとなくデジャヴを感じながら壱哉は先を促した。
「・・・ほう?」
壱哉の関心が戻ったことを強欲な・・もとい意欲溢れる彼女が見逃すはずもなくより一層爛々と目を輝かせながら口早に捲し立てた。
「もうねえ・・本当に素晴らしいのよぉ?・・・夏は涼しくて冬は温か、当社の売れ筋ナンバーワンの商品なんですの!絶~対損はさせませんわぁ~だってぺらぺらぺら~~~~~のぺらぺらぺらなんですもの~!高級志向、高品質な物こそ相応しい貴方にもうぴったり!これならお友達でも恋人でも?より仲が深まってご満足していただけると思いますわよっ!この機会を逃したら、あ~たきっと後悔すると思うのよ、あたくしっ」
さて、なんて応えたものかな
⇒適当に相槌をうつ
・・・そして
「なるほどっ!・・それは間違いなくお買い得というわけだな?」
勢いに押された感はあったものの見事に説得された壱哉が超高級布団の購入を即決したのは言うまでもなかった。
!黒崎壱哉は「オバサン」の暗示にかかり【高級布団一式】を購入した!
「ふう・・なかなかいい買い物ができたな。これならきっと新も喜ぶこと間違いなしだ」
天敵に遭遇して若干のストレスはかかったものの、審美眼に自信のある身として満足のいく買い物に気をよくした壱哉は確認するためにカードに目を落とした。
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「1,000,000S・Gだとっ!?あのババアッ・・この俺をぼったくるとはいい度胸だ」
(-1,000,000)
慌てて外に飛び出したものの、すでに招かれざる訪問者の影も形もなかった。
どうやら品物を入手した時点でカードを手渡さなくても勝手に差し引かれてしまう仕組みらしい。
「・・・・・衝動買いには要注意ということだな」
いずれにしても布団は必要であったのだからと壱哉がなんとか己を納得させたちょうどその時、再びチャイムが鳴った。
「今度は誰だ!?」
今度は少しだけ用心深くドアスコープから確認した壱哉の視線の先に、今度こそ正真正銘吉岡の手配した業者一行が佇んでいたのであった。(-300,000)
!黒崎壱哉が【エアコンの設置】したことで清水新の部屋が少しだけグレードアップした