一方、



電車でバイト先へと向かいながら、新は突然できた同居人のことを考えていた。



(まさか黒崎さんが・・ドジッ子属性とはなあ・・な~んか同病相哀れむって気がしてきたぜ。って言っても、俺が工具箱落っことしたのは重さでよろけただけだけど・・・!もしかして・・黒崎さんも同類だって思ったから、車壊した俺んこと怒んなかったんかなあ?・・・な~んてな、そんなわけないか)



とは言うもののあながち外れていないのでは?と妙な確信を抱きながら新は自分でも意外なほど初対面に近い壱哉を信用していることに内心驚きを感じていたのである。



(・・俺、誰かに合鍵、渡すのって・・初めてなんだよな・・そう思ったらなんか照れんな)



壱哉に合鍵を渡した時、いつになく緊張していた新だったが、壱哉が自然な所作で受け取ってくれたことが嬉しかった。



『ああ・・いってらっしゃい。・・・気を付けてな』



そう言って誰かに送り出してもらうのは本当に久しぶりで新は抑えようもない喜びを感じたが、一方で忘れ去っていた不安が心の片隅で頭をもたげる不快感を無視することができなかった。



当たり前のように『大切な人』が自分の帰りを待っていてくれるのだということが『幻想』にすぎなかったのだと思い知らされた日から抱え込んだ『孤独』という名の闇が、浮かれる自分を叱咤するのだ・・・もう一度誰かに『裏切られ』傷つくことを恐れるかのように・・・



(どうしようっ!?・・・家に帰っても黒崎さんがいなかったら・・・あの人たちみたいに俺んこと置いていなくなってたりしたら・・・)



そう思えば不安はつきなかった。



初めての経験に直面した新にとって、これまでなかった新たな葛藤と試練を迎えようとしていたのだった。