元気よく出かけた新を見送り部屋に一人残された壱哉は、なんとなく物寂しさを感じながらため息をつくと、ネピリムの寄越したカードを懐から取り出して見た。



!!



(やはり・・・増えている)



1,800,001



昨夜最後に確認した時は確かに、100,001だった。吉岡と話した直後に数字が増えていることに気づき安堵したのだから間違いなかった。



壱哉は先ほどの会話で吉岡が最後に付け加えた言葉を思い返し、思案顔になった。



『・・・それと壱哉様・・・最後に一つご忠告をさせていただいてもよろしいでしょうか?』



いつになく固い吉岡の声に含まれた緊張を察した壱哉は不安な面持ちで先を促した。



『なんだ改まって・・どうした?』



『はい。ネピリムから渡されたというカードの使用法ですが・・もうすでにお気づきかもしれませんが、このカードの数字は壱哉様のお心次第で増減するようです』



それはすでに昨夜のうちに気づいていたことだった。



『ああ、それならわかっている。それで?』



嫌な予感を覚えながら先を促すと、吉岡は躊躇いがちに続けた。



『実はこの世界で壱哉様が買い物をされる場合、このカードを使用しなくてはなりません』



吉岡の言葉に壱哉は改めてカードの重みを感じながら確認した。



『では先ほど俺が手配した件も?ここから引かれてゆくということか?』



『・・はい、おっしゃるとおりです。エアコンの設置に伴う諸経費で・・300,000SGが壱哉様のカード、・・いえ、貴方の魂から減ってしまうということになります』



!!(-100,000)



改めて言われると胃の腑が重くなる心地がしたが、壱哉は吉岡に心配をかけまいと心がけながら答えた。



『ふっ・・・なるほどな。金融会社社長のこの俺が己の魂で自己破産しないように気をつけなくてはならないというわけか・・・ネピリムめ考えたものだな』



『壱哉様・・くれぐれもお気を付けください。残念ながら私の方で、貴方の魂の残高がどうなっているのか常に把握することはできません。ただ、ご命令された手配にどれだけのSGがかかるのかは分かりますので、逐一お知らせすることはできます。・・・全ては貴方のお心次第だということを忘れないでください。・・・私はっ・・絶対に貴方を失いたくありません』



『大丈夫だ・・約束する、俺は絶対にお前たちを取り戻してみせる』



普段動じることの少ない吉岡の心細げな声に耳を傾けながら、壱哉は改めて彼に誓うのだった。