誰かの気配を感じて明かりの消えた吉岡の部屋で目を覚ました後、新を求めて居間に戻ろうとした壱哉だったが、出遅れた間に自分に関する噂話に及んでしまい気まずくて出るに出られず、そうこうするうちに旧友からの電話を受け洗面所に一端退却して気を落ち着けてから再び居間に戻ってみるとすでに客は帰った後だったので、大人しく新の戻りを待つ間に再び寝入ってしまったことを新は知る由もなかった。



――あ・・・




「・・・黒崎さん?・・んなとこで寝てたら風邪を引くぞ?・・・」(あ・・口元笑ってる)



普段あまり目にする機会のない壱哉の寝顔はとても穏やかで、やることは大人気ないのに腹はたたなかった。首から外したマフラーを巻いてやると壱哉が嬉しそうに笑みを浮かべながら寝言をもらした。



壱哉

「・・・新・・・ムニャ・・サプライズだぞ・・」



どんな夢を見ているのか想像を巡らせた新は溜息をついた。




「・・・ったくぽんぽこぴー・・黒崎さんがいない間にみんな帰っちゃったぞ?あのさ、みんなが黒崎さんによろしくってさ・・」



(いい夢見てんかな。黒崎さん・・忙しい人なのに俺の為に時間割いてくれて、皆にも声かけてくれて・・疲れてるの見せないで一緒に楽しんでくれて、俺、感謝してるんだぜ?・・・ありがとうな)




「俺、・・すぐ不安になるけどさ・・けど誰でも良いわけじゃないんだぜ?あんただから・・傍にいて欲しいんだって、わかってる?黒崎さん。・・俺もあんたの傍にずっといるって約束したしな?」(エプロン兄ちゃんと何があったのかはわからないけどさ・・俺のこと裏切ったりしないって・・黒崎さんのこと信じてるからさ)




「大好きだぜ、黒崎さんドキドキ



チュッ



温かな唇に掠めるように口付けた新は、照れながらひとりごちた。




「・・・目、覚まさないのかよ。・・ったく・・どうすっかな・・俺じゃあんたを運べねぇし・・毛布もってきてやるか」(無防備な黒崎さん・・なんか嬉しい)



やっと二人きりになれたのに吉岡を呼びに行くのももったいない気がした。



(大勢で騒ぐのも楽しいけどさ・・やっぱ二人きりって捨てがたいもんな。それに黒崎さんの寝顔、めったに見れねぇし)



大急ぎで寝室から持ってきた毛布をかけてやろうとした手を止めしばし思案した後、新は壱哉の隣りに寄り添うように腰掛けると毛布を引き寄せた。




「・・・こうすれば温かいだろ?・・お休み、黒崎さん」



互いの体温と心音を感じながら新はゆっくりと目を閉じたのだが・・・



――――んはてなマーク



もぞもぞと腰を抱きこまれた感触に驚いた新がギョッとして目を覚ますと、間近に口元を綻ばせた壱哉の笑顔があった。




「黒崎さん!?・・・って、寝てたんじゃないのかよっ」(たぬき寝入りかよ~!!)



先ほど口にした本音の数々を思い出し、顔を真っ赤にして動揺する新を面白そうに見つめながら壱哉が言った。



壱哉

「いや、寝てたぞ。・・だがな、恋人の甘い告白を聞き逃すほど俺は薄情な男じゃないつもりなんだがな」



一見面白がるような気配を漂わせながらも壱哉の目は真剣そのもので、新は自分の想いを壱哉がしっかりと受けとめてくれたことに安堵を覚えた。




「・・・黒崎さん」



壱哉

「・・・俺のいない間、客の相手を一人でさせてすまなかったな。・・・新、俺もお前がいなくて寂しかったぞ?」



温かな腕に抱きしめられたまま告げられる真摯な想いに、新は心が震えるのを感じながらしっかりと頷き返した。



壱哉

「・・・それでだ。俺は充分仮眠をとれたし・・お前さえ元気なら・・夜はこれからだと思わないか?・・新」



ビックリマーク




「やっぱそうくるよなあ・・あんたらしいっちゃあんたらしいんだけどさ。・・ま、いいか今夜は特別だもんな?黒崎さん」



壱哉

「ああ・・お前だけの、恋人の特権だからな」




「・・・うんラブラブ



幸せを手にして満ち足りた笑みを浮かべた新は、最愛の恋人の温もりをしっかりと抱き寄せたのだった。





おしまい








赤薔薇姫-俺下 魔王様を起こす魔法のキス!?