この作品は新くんのお誕生日会のおまけ作品です。みんなの心の声とともにお楽しみください。






「お疲れ様です、樋口さん。樋口さんのくれたバイクのプラモ細かいとこまですっげー凝っててびっくりしました。・・俺、あんま器用じゃないけどさ・・頑張って組み立てるから完成したら見てくださいね?」(そ~いやエプロン兄ちゃんってプラモとか好きなんだっけ・・)



樋口

「あ、喜んでくれたなら良かったよ~。あれ、限定モデルなんだ。わからないことがあったらお兄さんになんでも聞いてね?手取り足取り教えてあげるからっ」(びっくりなのは新くんがこの細腰で黒崎と・・・って何考えてるんだ俺っ・・いかんいかんあせる



樋口

「だってさ黒崎が君に贈った薔薇は俺が作ったわけだし・・俺からのプレゼントってことになるかもしれないし、それじゃ黒崎にも君にも悪いから俺は俺でプレゼントを用意することにしたんだよ」(お得意様だけど複雑だよなあ)




「・・・言われてみればそーかも」(そう思ったら微妙だぜ汗



山口

「二人からってことでいいんじゃないかなあ」




「あ、山口さん。マフラーありがとうございます!これ温かいや」(なんかお袋のこと思い出すぜ)



樋口

「あ~山口さん。毎度、樋口花壇をごひいきにしていただいて・・」(奥さんの月命日に献花をかかさない人だよなあ)



親しみのこもった営業スマイルを浮かべ会釈する樋口に律儀に目礼した山口は、新の首に巻かれたカーキ色の手編みのマフラーに目をとめると柔和な笑みを浮かべた。



山口

「気に入ってもらえたようで良かったよ~。その色にしようって言ったの・・実は一也なんだ」(ツナギのイメージが強いからなあ・・清水くん汗



樋口

「よく似合ってるよ、新くん」(まさかの手編み!?・・山口さんって器用だなあ)



ゲストの二人にまで片づけを手伝ってもらうのは気が引けたが、快く力を貸してくれたことに対する感謝を込めて淹れたてのほうじ茶を注ぎながら新は尋ねた。




「あ、一緒にデザートもどーですか?」(まさかあんなデッカいケーキくるとは思わなかったもんなあ・・・嬉しかったけどさ。山口さんに教えてもらえたし・・明日にでも前の職場のみんなに挨拶がてらお裾分けしに行くかな)



樋口

「お茶ありがとう、でもケーキは遠慮しておくよ。・・さすがにもうお腹いっぱいだからね」(それにしても・・・あのケーキはスゴかった。誕生日であんなデラックスなケーキ用意するなんて・・さすが黒崎)



山口

「僕も遠慮するよ。一也にどうぞって吉岡さんにお土産もたせて貰っちゃったしね・・」(お、ほうじ茶かあ・・ホッとするなあ)




「・・・・はは」(だいたいケーキの上に俺と黒崎さんの人形のってるとかありえねー汗・・でもみんな意外と動じなかったよなあ・・ま、あの程度で驚いてちゃ黒崎さんとはつきあえねーか)



吉岡

「コホンッ・・あれは最近日本でも活躍中の有名パティシエに特注したものですよ。なんでも壱哉様の留学時代のご学友だとか」(・・ま、彼となにがあったにせよもう昔の話のようですが。今の壱哉様は真剣に清水さん一途ですから)




「そーなんですか、吉岡さん?それにしても黒崎さんって人脈広いよなあ」(どーりで美味かったもんなあ。黒崎さん、ケーキ入刀一緒にやりたがるからなんか結婚式みてぇで恥ずかしかったけど・・・楽しかったよな)



吉岡

「はい」(先方とのスケジュールの調整は大変でしたが、結果良好で私も肩の荷がおりました)



一方・・少し前からケーキの話しで盛りあがる彼らの様子を廊下から伺っていた壱哉の脳裏に若かりし頃の友の姿が浮かんだ。



『壱哉はさ、真剣な恋はしないの?』



当時の彼は取り巻きですらなく、関係をもたなかったその他大勢の一人に過ぎなかったが、相手を取っ換え引っ換えしていた壱哉に彼が投げかけた言葉だった。それに対し壱哉は一笑に付しただけだったが、ただ彼がやけに真剣だったからひどく印象に残ったのだろう。



『僕、卒業したら国を出て売れっ子の菓子職人になるんだ。だからね、もし壱哉が本当に好きな人ができたら連絡してよ。貴方のために特製のケーキを作ってあげるからさ』



将来の話しを確信もってする友を眩しく思いながらも、壱哉はすげなく返した。



『生憎だが・・俺は結婚する気はないし、ステディも作らない』



すると彼は飄々とした面持ちでこともなげに言った。



『先のことはわからないだろう?・・僕は君に特別な人が現れることを祈ってるよ』



『矛盾してないか?先のことが分からんならお前が菓子職人とやらになれるかも分からんじゃないか』



意地悪く返したあの日の自分には想像すらできなかっただろう・・・・幸運の訪れなど。


新と出会い好きになり初めての誕生日を共に祝うことになった時、そう言って微笑んだ彼の姿がふと浮かんだ。卒業後疎遠になっていたにも関わらず、久し振りに連絡をとった壱哉の頼みを彼は待ち構えていたかのように快く引きうけてくれたのだった。TVや雑誌で見知ってはいたが、久し振りに再会を果たした彼は学生時代の面影はなくすっかり頼もしくなっており、その左手の薬指にはさりげなく指輪が嵌っていた。なんでも数年前に結婚したのだそうだ。



『これが君の大切な人かい?随分若い子で驚いたけど・・でも、約束だからね。いいよ、壱哉と君の愛する人のためにとびきりのケーキを作ってあげよう。僕からのささやかな祝福の証しだよ』



当時から壱哉に対し偏見のなかった彼に新の写真を見せたら破顔した目元が若かりし頃の彼の笑顔と重なった。そして壱哉は改めて自分が友人に恵まれていたらしいことに気付かされたのだった。